

UX/UIデザイン用語集②|設計の思考体系
この用語集は「UXってなんだか小難しそう」「プロジェクト内で用語や定義がバラバラ」といったエンジニアやデザイナーの初学者の方向けに、まずはUX/UIデザインについて広く全体像を掴んでいただく意図で作成しています。
概要的な説明を記載していますので、気になる用語を見つけた際はぜひご自身で深く調べてみてください。
この用語集は以下①〜⑧の記事で構成されています。UX/UIデザインの基本概念から設計フレーム、調査手法、UI構成要素、ドキュメント、チーム体制、開発連携に至るまで、全体を俯瞰できる用語を選定して整理しています。
様々な企業や職種が関わるプロダクト開発の現場において、UX/UIデザインへの共通理解を深め、意思決定や進行の遅れを防ぐお手伝いになれば幸いです。
<UX/UIデザイン用語集へのリンク>
| ① | UXの基本概念 | 前提の考え方 |
| ② | 設計の思考体系 | ユーザー中心の発想法 |
| ③ | ユーザー理解の調査手法 | 現状把握の手段 |
| ④ | 設計補助フレーム | 調査や整理、可視化に頻出するフレーム |
| ⑤ | UIの構成要素と表現 | 画面設計時の大切な要素 |
| ⑥ | その他 成果物やドキュメント | UI以外の有効なドキュメント |
| ⑦ | UXチーム構成 | よく協業する職域 |
| ⑧ | ツール・開発連携 | よく使用するツールや開発との連携 |
人間中心の創造的問題解決プロセス
デザイン思考は、スタンフォード大学のd.school(ハッソ・プラットナー・デザイン研究所)によって体系化された、人間中心の問題解決手法です。以下の5つのステップを通じて、ユーザーのニーズに基づいた革新的な解決策を導き出します。
・共感:ユーザーの立場に立ち観察やインタビューを通じ深く理解する
・定義:収集した情報を分析しユーザーの本質的な課題を明確にする
・発想:自由な発想で多様なアイデアを創出する
・試作:アイデアを具体的な形にし簡易なプロトタイプを作成する
・テスト:プロトタイプをユーザーに試してもらいフィードバックを得て改善する
このプロセスは直線的ではなく、各ステップを行き来しながら反復的に進めることが特徴です。
使われる場面
デザイン思考は、UXデザインだけでなく、新規事業開発、教育、公共サービスなど、多様な分野で活用されています。特に、明確な正解がない複雑な課題に対して、ユーザー視点での共通理解を築く手段として有効です。
POINT
・ユーザーの「行動」とその背景の「意図」や「感情」に注目する
・早期にプロトタイプを作成し、失敗から学ぶ姿勢を持つ
・多様な視点を取り入れるために、チームでの協働を重視する
ISO 9241-210に基づく設計プロセス
HCD(Human-Centered Design)は、ISO 9241-210:2019で定義された、ユーザー中心の設計手法です。ユーザーの期待や行動を深く理解し、それに基づいて製品やサービスを設計することを目的としています。主な特徴は以下の通りです。
・ユーザーの文脈理解:利用環境や制約を考慮する
・継続的なユーザー参加:設計の全段階でユーザーの関与を促す
・反復的なプロセス:プロトタイプとユーザーテストを繰り返して精度を高める
・包括的なユーザー体験の向上:操作性だけでなく感情的満足度も重視
このアプローチは、単なるUI改善ではなく、製品開発の初期段階から一貫してユーザー視点を取り入れる点に特徴があります。
よくある誤解
「ユーザーの意見をすべて取り入れることがHCD」と誤解されがちですが、本質は“観察と文脈理解”です。ユーザーが表現できない潜在ニーズまで把握し、設計に反映させることが重要です。
POINT
・ユーザー調査は「いつ・どこで・なぜ使うか」の文脈も含めて行う
・プロジェクト初期からエンジニアやビジネス担当も巻き込む
・一度の調査でなく継続的なフィードバックループを設計に組み込む
短期間での課題解決と検証のプロセス
デザインスプリントは、以下の5つのステップで構成されます。
・理解:課題の背景やユーザーのニーズを把握し、長期的な目標とスプリントの焦点を定める
・発散:個々のメンバーがアイデアを出し、多様な解決策を模索
・収束:最も有望なアイデアを選定し詳細なストーリーボードを作成
・試作:選定したアイデアを基に、ユーザーに見せられるレベルのプロトタイプを作成
・検証:実際のユーザーにプロトタイプを試してもらい、フィードバックを収集してアイデアの有効性を検証
このプロセスで従来の開発手法よりも迅速にユーザーフィードバックを得ることができ、方向性の確認や新規事業の検証に適しています。
使われる場面
新しいサービスの初期設計、アイデアの有効性検証、既存サービスの改善など、短期間で仮説検証したい場面で多用されます。特に時間や予算が限られている場合に有効です。
POINT
・事前準備(課題の明確化・関係者の調整)を徹底する
・各ステップごとにファシリテーターを配置する
・完成度よりスピード重視、早く失敗して早く学ぶ
横断型でサービス全体を設計
サービスデザインは、ユーザー体験(UX)だけでなく、サービスを支えるスタッフやシステム、ビジネスプロセスなど、サービス全体を構成する要素を横断的に設計するアプローチです。以下のような特徴があります。
・顧客視点と事業視点のバランスを重視
・サービス提供の「裏側」(バックエンド)にも注目
・ユーザーの旅路(カスタマージャーニー)を可視化して設計
・チーム横断での協働が不可欠
・「見えない体験」も設計対象とする
経済産業省はサービスデザインを「顧客体験のみならず、顧客体験を継続的に実現するための組織と仕組みをデザインすることで新たな価値を創出するための方法論」と定義しています。
使われる場面
サービスデザインは、店舗、医療、行政、Webサービスなど、ユーザーと複数の接点を持つあらゆる業種で活用されます。特にサービスが「連続的な体験」で成り立つ場合(例:ホテル滞在、サブスクリプションなど)、ユーザーの満足度向上と業務効率化の両立に有効です。
POINT
・「サービスは目に見えない」からこそ、見える化して議論する
・運用する体制や仕組み作りの視点を持つ
・サービス提供者(従業員)の体験も考慮する
ストーリーボード
ユーザーがサービスやプロダクトを利用する一連の体験を、時間軸に沿って視覚的に表現した図解手法。
各シーンを通じてユーザーの行動や感情を描写し、UX設計の理解と共有を促進する。
ユーザー体験を「物語」として描く
ユーザーがあるサービスやプロダクトを利用する際の行動や感情を、物語のようにシーンごとに可視化する手法です。複数の「コマ(シーン)」に分けて時系列で描くことで、ユーザー体験の流れを直感的に共有できます。
これは特にプロジェクト初期において、チーム内やステークホルダーとの共通認識を形成するのに効果的です。以下のような特徴があります。
・ユーザーの行動・状況・感情を時間軸で整理
・キャラクター、UI、セリフなども描写対象に含む
・誰にでも伝わりやすい視覚的な構成・表現
これらの要素は相互に関連し、1つでも欠けるとUX全体に悪影響を与える可能性があります。
使われる場面
サービスの利用シナリオを検討するワークショップや、新機能の導入時にチーム内で利用状況を共有する場面、またユーザーに受容性調査を行う際の概要説明資料としてよく活用されています。
POINT
・シナリオは「現実的なユーザー行動」に基づいて構成する
・絵の上手さよりも「内容が伝わること」が重要
・1コマごとに「ユーザーの感情」を明示すると効果的
その他のUX/UIデザイン用語集へのリンク
| ① | UXの基本概念 | 前提の考え方 |
| ② | 設計の思考体系 | ユーザー中心の発想法 |
| ③ | ユーザー理解の調査手法 | 現状把握の手段 |
| ④ | 設計補助フレーム | 調査や整理、可視化に頻出するフレーム |
| ⑤ | UIの構成要素と表現 | 画面設計時の大切な要素 |
| ⑥ | その他 成果物やドキュメント | UI以外の有効なドキュメント |
| ⑦ | UXチーム構成 | よく協業する職域 |
| ⑧ | ツール・開発連携 | よく使用するツールや開発との連携 |
以下の記事でもUX/UIについて紹介しています。興味を持っていただけましたらぜひご覧ください。
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最後に
本シリーズが、みなさまのプロジェクトにおける「共通言語づくり」の一助となれば幸いです。
UX/UIデザインを「難解な専門領域」ではなく、誰もがよりよいプロダクトづくりに参加するための「思考の土台」と捉え、気になる用語や概念があれば、ぜひ実務に照らして深掘りしてみてください。
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