

UX/UIデザイン用語集①|UXの基本概念
この用語集は「UXってなんだか小難しそう」「プロジェクト内で用語や定義がバラバラ」といったエンジニアやデザイナーの初学者の方向けに、まずはUX/UIデザインについて広く全体像を掴んでいただく意図で作成しています。
概要的な説明を記載していますので、気になる用語を見つけた際はぜひご自身で深く調べてみてください。
この用語集は以下①〜⑧の記事で構成されています。UX/UIデザインの基本概念から設計フレーム、調査手法、UI構成要素、ドキュメント、チーム体制、開発連携に至るまで、全体を俯瞰できる用語を選定して整理しています。
様々な企業や職種が関わるプロダクト開発の現場において、UX/UIデザインへの共通理解を深め、意思決定や進行の遅れを防ぐお手伝いになれば幸いです。
<UX/UIデザイン用語集へのリンク>
| ① | UXの基本概念 | 前提の考え方 |
| ② | 設計の思考体系 | ユーザー中心の発想法 |
| ③ | ユーザー理解の調査手法 | 現状把握の手段 |
| ④ | 設計補助フレーム | 調査や整理、可視化に頻出するフレーム |
| ⑤ | UIの構成要素と表現 | 画面設計時の大切な要素 |
| ⑥ | その他 成果物やドキュメント | UI以外の有効なドキュメント |
| ⑦ | UXチーム構成 | よく協業する職域 |
| ⑧ | ツール・開発連携 | よく使用するツールや開発との連携 |
UX(ユーザーエクスペリエンス)
ユーザーが製品やサービスを使用する前、使用中、使用後に感じるすべての知覚や反応を指す。
感情、信念、嗜好、行動、達成感などが含まれる。
「体験全体」を設計対象とする考え方
UXは単なる操作性や見た目だけでなく、ユーザーが製品やサービスを通じて得る体験全体を対象とします。
以下のような要素が含まれます。
・感情的側面:喜び、安心感、達成感など
・認知的側面:理解のしやすさ、情報の明確さ
・行動的側面:操作の容易さ、効率性
これらの要素を総合的に設計・評価することで、ユーザーにとって価値ある体験を提供します。
よくある誤解
「UX=UIのこと」と誤解されがちですが、UXはユーザーの感情や心理も含む体験全体を意味します。
UIはその一部であり、大きな要素ではありますが、UXの良し悪しはUIだけでは決まりません。
POINT
・「誰が、なぜ使うのか?」を常に意識する
・操作感だけでなく感情の動きも設計対象にする
・定性的・定量的なリサーチを通じてUXを評価する
「使いやすさ」を構成する5つの要素
ユーザビリティは、UXの中心的な要素であり、以下の5つの品質特性で評価されます。
・学習しやすさ:初めてでも基本的な操作がすぐに理解できるか
・効率性:習熟後にタスクを迅速に完了できるか
・記憶しやすさ:一定期間使用しなくても再び簡単に使えるか
・エラー:誤操作が少なく、問題が発生しても簡単に回復できるか
・満足度:使用体験が快適で、ポジティブな印象を持てるか
これらの要素をバランスよく設計することで、ユーザーが目的を達成しやすくなり、製品やサービスの価値が向上します。
使われる場面
ユーザビリティは、新機能の設計時や既存サービスの改善時に特に重要です。ユーザビリティテストやヒューリスティック評価などの手法を用いて、ユーザーの視点から課題を発見し、改善するプロセスが求められます。
POINT
・実際のユーザーによるテストで「使いやすさ」を検証する
・操作ステップを最小限にし、直感的なナビゲーションを設計する
・技術的な正確性よりも「ユーザーの感じ方」を重視する
ユーザビリティ10原則
Jakob Nielsen(ヤコブ・ニールセン)が提唱した、良質なユーザーインターフェースに共通する10の基本原則。
UIの設計レビューや改善に役立つ指針。
ユーザー視点の設計評価に不可欠
ユーザビリティ10原則は、UIデザインの良し悪しを評価するヒューリスティック評価という手法のチェックリストとしても応用されます。
・システム状態の視認性
・システムと現実世界の一致
・ユーザーの主導権と自由
・一貫性と標準
・エラーの予防
・想起よりも認識
・柔軟性と効率性
・美的で最小限のデザイン
・エラー時の認識・診断・回復のサポート
・ヘルプとドキュメンテーション
使われる場面
ユーザビリティテストを行う前の初期段階で、UIの課題を専門家が見つけ出す「ヒューリスティック評価」で特によく用いられます。コーディング前のプロトタイピングレビューなどにも有効です。
POINT
・原則は覚えるよりも、実際のUIと照らしながら理解するのが効果的
・チームで共通言語として使うと議論がスムーズに進む
・「原則に違反していないか」のチェックに活用しやすい
UX5段階モデル
ユーザー体験を5つの層に分解し、戦略から視覚表現まで一貫したUX設計を支えるフレームワーク。
各層は順に積み重なり、下層の決定が上層に影響を与える構造となっている。
UX設計を構造的に捉える5つの層
UX5段階モデル(The Five Planes of UX)は、Jesse James Garrettが2000年に提唱し、2002年の著書『The Elements of User Experience』で体系化されたUX設計の構造モデルです。
・戦略:ユーザーのニーズとビジネス目標の明確化。プロダクトの方向性を定義
・要件:機能要件とコンテンツ要件を整理。提供すべき内容を決定
・構造:情報構造やユーザーの動線を設計し、全体の骨組みを構築
・骨格:UIレイアウト、ナビゲーション、情報配置を具体化
・表層:ビジュアルデザインで感覚的な体験を構築
このモデルにより、UX設計を上記のように段階的・論理的に進めることが可能となり、各層のアウトプットが次の層のインプットとなることで、一貫性のあるユーザー体験を実現できます。
使われる場面
UXプロジェクトの初期フェーズで設計全体の道筋を立てる際に活用されます。特にチーム間の共通理解を形成したり、設計上の抜け漏れを防ぐフレームワークとして有効です。
POINT
・各段階のアウトプットを明確に定義する
・下層が曖昧だと上層もブレやすくなる
・チーム内で段階の理解を揃えておくことが重要
UXを7つの視点で捉える
UXハニカム(User Experience Honeycomb)は、情報アーキテクトのPeter Morvilleによって2004年に提唱されたUX評価のためのモデルです。このハニカム構造には以下の7つの要素が含まれます。
・Useful(有用である):ユーザーに意味ある情報や機能である
・Usable(使いやすい):直感的で操作が簡単である
・Desirable(魅力的である):見た目やブランドが感情に訴える
・Findable(見つけやすい):情報や機能に簡単にアクセスできる
・Accessible(アクセス可能である):誰もが使えるデザインである
・Credible(信頼できる):情報やサービスに信頼が持てる
・Valuable(価値がある):ビジネスやユーザーの目的に貢献する
これらの要素は相互に関連し、1つでも欠けるとUX全体に悪影響を与える可能性があります。
よくある誤解
UXハニカムは「使いやすさ(Usable)」だけを高めればよいという誤解がありますが、それ以外の要素(感情・価値・信頼性など)も含む広範な概念を指しています。
POINT
・7つの要素をバランスよく考慮する
・プロジェクト初期にUXハニカムを用いて評価軸を明確にする
・デザインレビュー時にUXハニカムを使って客観的に判断する
3つの心理的ハードル
心理的ハードルは、以下のように分類できます。
・操作性ハードル:操作が分かりにくい、面倒に感じる
(例:複雑なUI、遅いレスポンス)
・認知的ハードル:理解が難しい、情報が処理しにくい
(例:専門用語、混乱するナビゲーション)
・感情的ハードル:不安や不信感を抱く
(例:料金が不明、信頼できない印象)
これらはユーザーの離脱要因となるため、ユーザーへのインタビューなどを通して丁寧に取り除いて設計することがたいせつです。
使われる場面
主にサインアップや購入を促すためのフロー設計や、離脱率の高いUIの改善、さらに初回ユーザーがスムーズに利用できるよう導線を最適化する際などに用いられます。
POINT
・ハードルの「種類」を意識して原因分析する
・小さな迷い・不安にも敏感になる
・スムーズ・安心・簡単な体験設計を心がける
誰もが使えるデザインを目指す
アクセシビリティ(Accessibility)とは、障害の有無にかかわらず、あらゆるユーザーがWebサイトやアプリを快適に操作・理解できるように設計することです。視覚・聴覚・運動・認知など、さまざまな障害を考慮して、誰にとっても使いやすいインターフェースを実現することが目的です。
主な配慮点には、音声読み上げ対応、キーボード操作対応、色覚多様性への配慮、明確な階層構造などが含まれます。また、アクセシビリティ対応は法的要件となる場合もあり、社会的責任でもあります。
※最新の国際基準であるWCAG 2.2(2023年10月勧告)では、フォーカスの視認性やターゲットサイズの最小要件など、操作性や認知負荷に配慮した9つの新しい達成基準が追加されました 。
よくある誤解
「アクセシビリティ対応は、特定の障害者だけのもの」と考えられがちですが、実際には一時的なケガ、高齢者、低速な通信環境のユーザーなど、誰もが恩恵を受ける要素です。普遍的な使いやすさは、全体のUXを底上げします。
POINT
・色だけに頼らない情報提示を心がける
・キーボードだけでも全操作が可能なUIを設計する
・画像には代替テキスト(alt属性)を必ず付ける
誰にでもやさしいデザイン
ユニバーサルデザインは、特定のユーザー層を対象にするのではなく、「できるだけ多くの人にとって使いやすいこと」を目指す設計哲学です。以下のような特徴があります。
・高齢者や障害者も含めた幅広いユーザーの利用を想定する
・特別な適応や改造なく最初から誰でも使えることを意識する
・シンプルで直感的な操作や視認性の高い色使いを重視する
・建築・プロダクト・Webなど、あらゆるデザイン領域で活用される
UIデザインでは、色覚異常を考慮した配色や、音声以外での情報提供などが該当します。
よくある誤解
「アクセシビリティ」と混同されがちですが、アクセシビリティは障害のある人への対応が主眼であるのに対し、ユニバーサルデザインは「最初からすべての人の使いやすさ」を目指す点で異なります。
POINT
・ユーザーの身体的・文化的背景を想定して設計する
・色・文字・操作方法は誰にでもわかりやすく
・アクセシビリティとの違いを理解し、補完的に取り入れる
CX(カスタマーエクスペリエンス)
顧客が企業やブランドとのすべての接点で得る体験全体を指す。
単なる製品やサービスの品質にとどまらず、感情的な満足や信頼感も含まれる。
総合的な顧客体験の価値
CXは、顧客がサービスを認知してから購入・利用・サポートに至るまでの一連の接点(タッチポイント)で形成されます。これは以下のような要素で構成されます。
・Webサイトやアプリの操作性、デザイン
・店舗スタッフやカスタマーサポートとの対応
・配送や返品のスムーズさ
・商品の期待に対する満足度
・企業・ブランドに対する感情的な印象
良好なCXは顧客のロイヤルティやリピート率、口コミによる新規顧客の獲得に直結します。逆に悪いCXは離脱や炎上の原因になります。
よくある誤解
CXはマーケティング、カスタマーサポート、UXデザイン、ブランディング、経営戦略など、あらゆる部署で注目される概念です。特に近年ではデジタル接点が主流となり、UXとCXの境界が曖昧になりつつありますが一般的にはUXより幅広い概念という理解が多いです。
POINT
・顧客視点に立って全体の体験を設計する
・定量だけでなく感情的な満足度も測定する
・タッチポイントごとに一貫したブランド体験を提供する
その他のUX/UIデザイン用語集へのリンク
| ① | UXの基本概念 | 前提の考え方 |
| ② | 設計の思考体系 | ユーザー中心の発想法 |
| ③ | ユーザー理解の調査手法 | 現状把握の手段 |
| ④ | 設計補助フレーム | 調査や整理、可視化に頻出するフレーム |
| ⑤ | UIの構成要素と表現 | 画面設計時の大切な要素 |
| ⑥ | その他 成果物やドキュメント | UI以外の有効なドキュメント |
| ⑦ | UXチーム構成 | よく協業する職域 |
| ⑧ | ツール・開発連携 | よく使用するツールや開発との連携 |
以下の記事でもUX/UIについて紹介しています。興味を持っていただけましたらぜひご覧ください。
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最後に
本シリーズが、みなさまのプロジェクトにおける「共通言語づくり」の一助となれば幸いです。
UX/UIデザインを「難解な専門領域」ではなく、誰もがよりよいプロダクトづくりに参加するための「思考の土台」と捉え、気になる用語や概念があれば、ぜひ実務に照らして深掘りしてみてください。
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