

UX/UIデザイン用語集③|ユーザー理解の調査手法
この用語集は「UXってなんだか小難しそう」「プロジェクト内で用語や定義がバラバラ」といったエンジニアやデザイナーの初学者の方向けに、まずはUX/UIデザインについて広く全体像を掴んでいただく意図で作成しています。
概要的な説明を記載していますので、気になる用語を見つけた際はぜひご自身で深く調べてみてください。
この用語集は以下①〜⑧の記事で構成されています。UX/UIデザインの基本概念から設計フレーム、調査手法、UI構成要素、ドキュメント、チーム体制、開発連携に至るまで、全体を俯瞰できる用語を選定して整理しています。
様々な企業や職種が関わるプロダクト開発の現場において、UX/UIデザインへの共通理解を深め、意思決定や進行の遅れを防ぐお手伝いになれば幸いです。
<UX/UIデザイン用語集へのリンク>
| ① | UXの基本概念 | 前提の考え方 |
| ② | 設計の思考体系 | ユーザー中心の発想法 |
| ③ | ユーザー理解の調査手法 | 現状把握の手段 |
| ④ | 設計補助フレーム | 調査や整理、可視化に頻出するフレーム |
| ⑤ | UIの構成要素と表現 | 画面設計時の大切な要素 |
| ⑥ | その他 成果物やドキュメント | UI以外の有効なドキュメント |
| ⑦ | UXチーム構成 | よく協業する職域 |
| ⑧ | ツール・開発連携 | よく使用するツールや開発との連携 |
ユーザーリサーチの目的と手法
ユーザーリサーチは、ユーザーの真の課題やニーズを明らかにし、仮説に基づくデザインではなく、実証的なアプローチを可能にします。代表的な手法には以下のようなものがあります。
・ユーザーインタビュー:ユーザーの意見や体験を聞き深い洞察を得る
・アンケート調査:ユーザーから広く情報を収集し定量的データを得る
・観察調査:ユーザーの行動を記録・分析し潜在的な課題を発見する
・ユーザビリティテスト:製品の使いやすさを評価し改善点を特定する
これらの手法を組み合わせることで、ユーザーの行動や心理を多角的に理解し、より良いユーザー体験を提供することが可能になります。
使われる場面
企画段階では市場やユーザーニーズの探索に役立ちます。設計段階ではペルソナやユーザージャーニーの作成に活用され、開発段階ではプロトタイプの評価や改善点の発見に貢献します。さらに、リリース後もユーザー満足度の調査や継続利用の動機分析などに活躍します。
POINT
・ユーザーの「言葉・行動」の両方に注目し真のニーズを把握する
・調査結果はチーム全体で共有し、設計や開発に反映させる
・リサーチは一度ではなく継続的に行い、ユーザーの変化に対応する
UX改善の基盤となる顧客の声
カスタマーフィードバックには以下のような種類があります。
・能動的:アンケート、インタビュー、フォーカスグループ 等
・受動的:レビュー、サポート問い合せ、ソーシャルメディア投稿 等
・行動推測的:アクセス解析、利用ログ分析からの洞察 等
分析アプローチには以下のような種類があります。
・定量的データ:スコアや選択式回答による評価指標
・定性的データ:自由記述やコメントによる文脈的理解
フィードバックの活用は以下のようなステップでおこないます。
・収集(複数チャネルでの情報取得)
・分析(傾向把握・ユーザー文脈の理解)
・優先順位付け(改善施策の整理)
・実装・改善(ループとして継続)
使われる場面
新機能リリース後の満足度調査(NPSやCSAT)や、UI変更後の改善効果を検証するためのユーザーテストや行動ログの分析、さらにはレビューやサポート内容を分析してユーザーの不満を見える化する場面などでよく活用されます。
POINT
・定期的かつ継続的に実施し、改善の反応を追う
・定量 × 定性両軸で分析し、背景のニーズを理解する
・収集した声を可視化し、チームで情報共有・迅速に対応
ユーザーインタビュー
UXデザインの過程で実際のユーザーと対話し、行動の背景や感情、考え方などを深く掘り下げて理解する定性調査手法。特にプロダクトの初期探索や仮説検証段階に有効。
ユーザー理解のコアとなる調査
ユーザーの思考や感情の奥底にある「なぜ」に迫るために実施します。一般的に1対1、30〜60分程度、事前に準備した質問スクリプトをベースにユーザーの発言を深掘りする柔軟な進行を行います。そのため完全に決まった質問を順に聞く「構造化型」ではなく、流れに応じて問いをアレンジできる「セミ構造化型」がよく使われます。
目的は大きく2種類あり、新しいニーズの発見やインサイトの抽出を目的とする「探索型(Generative)」と、既に立てた仮説の妥当性を確認する「検証型(Evaluative)」です。
どちらもオープンクエスチョンを活用してユーザーの発言を引き出し、単なる事実だけでなく、その背後にある動機や価値観まで深く理解することが重要です。得られた情報は、ペルソナの設計やカスタマージャーニーの作成、UX改善の具体的なアイデア出しなど、さまざまな場面で活用します。定量調査では見落としがちな細かなニュアンスを拾えるのが特徴です。
よくある誤解
「ユーザーに聞けばそのまま答えが得られる」と思いがちですが、実際にはユーザー自身も無自覚なニーズや感情を抱えていることがあります。そのため、表面的な発言をそのまま受け取るのではなく、「なぜそう思ったのか」「どんな状況だったのか」といった背景を根気強く掘り下げる必要があります。
POINT
・インタビューの目的と仮説を明確にし矛盾のない質問で構成する
・ユーザーを誘導せず、自由に話しやすいオープンな形を意識する
・答えを鵜呑みにせず、背景や文脈に注目し深掘りする
ユーザー中心設計の「実地検証」
ユーザーテストは、ユーザー自身がアプリやWebサイトをどのように使うかを観察し、UX全体の課題を見つけるための方法です。特徴は以下の通りです。
・実際のユーザーに具体的なタスクを与えて操作してもらう
・ユーザー体験の流れや印象、混乱点など全体の反応を重視
・意見ではなく行動や態度を観察する
・実施形式は、対面型(モデレート)と非対面型(アンモデレート)、リモート実施など多様
製品開発の初期〜運用段階まで、繰り返し実施するのが理想的です。
よくある誤解
ユーザーテストは「ユーザーの意見を聞く場」ではありません。“ユーザーが実際にどう操作し、どこで迷うか”という行動観察が目的です。発言より行動に注目しましょう。
POINT
・ユーザーに説明しすぎず、「自由に使ってみて」と促す
・テスト中は無理に助けず、どこで困るかを見る
・観察した内容はチーム全体で共有し、UX改善につなげる
経験則に基づくUIの問題発見法
ヒューリスティック評価は、UXの専門家がユーザーになり代わり、インターフェースの設計がユーザビリティ原則に沿っているかを評価する手法です。
評価基準としては、ヤコブ・ニールセンによる「ユーザビリティの10原則」が有名で、例えば「ユーザーのコントロールと自由」や「エラーメッセージの明確さ」など評価にも活用できる内容が掲載されています。
ユーザーテストに比べて、低コスト・短時間で実施できる点が特徴で、プロダクト開発の初期段階やリリース前のチェックに適しています。
よくある誤解
ヒューリスティック評価は「実際のユーザーの声を代弁できる」と誤解されがちですが、あくまで専門家の視点による仮説的評価です。
POINT
・評価者は複数人で実施し、結果を統合すると精度が上がる
・ヒューリスティックの内容をあらかじめチームで共有しておく
・実施後は、発見された問題を優先順位づけして対策を立てること
UX改善の実験手法
ABテストは、ユーザー体験の質を向上させるための実験的アプローチです。ウェブサイトやアプリにおいて、ボタンの色や文言、配置などを変更した複数のバージョンを作成し、その反応(クリック率、滞在時間、CVRなど)を測定・比較し、効果的なパターンを選び出します。
有効なABテストを行うには、統計的な信頼性を確保することが不可欠です。十分なサンプル数と期間を確保したうえで、統計検定によって差異の有意性を判断します。以下のステップが一般的です。
・テスト前に仮説を立て、目的を明確にする
・変更する要素は1点に絞る
・AとBを無作為にユーザーに割り当てる
・指標を定義し、データを収集
・統計的有意性を確認し、最終判断を下す
差が見られなければ、変更しない、あるいは新たな仮説で再テストを実施します。継続的な最適化がUX向上の鍵です。
よくある誤解
「ABテストはすぐに効果が分かる」と思われがちですが、正しい判断には統計的な裏付けが必要です。サンプル数が少なかったり、期間が短すぎると、誤った結論に導かれることがあります。
POINT
・仮説に基づいてテスト設計する
・変更する要素は1つに絞る
・統計的に意味のあるサンプルサイズを確保する
ユーザーストーリー
ユーザーが「どんな人で」「何をしたくて」「なぜそれをしたいのか」を短い文章でまとめたもの。
アプリやサービスに必要な機能を、ユーザーの目線で考えるために活用する。
ユーザーの気持ちや目的を機能に
ユーザーストーリーは、チーム全員が「誰のために、どんな理由で、この機能を作るのか」を共有するためのツールです。
書き方の基本は「〜として、〜がしたい。なぜなら〜だから。」という形。たとえば、「ネットショップの利用者として、商品をお気に入りに入れたい。なぜならあとで比較したいから。」というように、シンプルな文で書きます。
このように書くことで、ユーザーの立場を忘れずに、必要な機能を考えることができます。細かい操作や画面の設計ではなく、「なぜそれが必要か」を話し合うきっかけになります。
よくある誤解
ユーザーストーリーは、設計図や作業のチェックリストではありません。「何を作るか」だけでなく、「なぜそれが必要か」を考えるためのものです。すべてを完璧に書くことよりも、あとで話し合うための出発点と考えるのが大切です。
POINT
・難しい言葉を使わず、誰でも読める文章にする
・実際のユーザーの行動を思い浮かべながら書く
・1つのストーリーは短く、すぐに試せるくらいの大きさにする
その他のUX/UIデザイン用語集へのリンク
| ① | UXの基本概念 | 前提の考え方 |
| ② | 設計の思考体系 | ユーザー中心の発想法 |
| ③ | ユーザー理解の調査手法 | 現状把握の手段 |
| ④ | 設計補助フレーム | 調査や整理、可視化に頻出するフレーム |
| ⑤ | UIの構成要素と表現 | 画面設計時の大切な要素 |
| ⑥ | その他 成果物やドキュメント | UI以外の有効なドキュメント |
| ⑦ | UXチーム構成 | よく協業する職域 |
| ⑧ | ツール・開発連携 | よく使用するツールや開発との連携 |
以下の記事でもUX/UIについて紹介しています。興味を持っていただけましたらぜひご覧ください。
この用語集をPDF版として見たい方は以下よりダウンロードください。
最後に
本シリーズが、みなさまのプロジェクトにおける「共通言語づくり」の一助となれば幸いです。
UX/UIデザインを「難解な専門領域」ではなく、誰もがよりよいプロダクトづくりに参加するための「思考の土台」と捉え、気になる用語や概念があれば、ぜひ実務に照らして深掘りしてみてください。
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