

メタスキルを育てる方法とは?ハイパーアイランドの「CRAFTメソッド」を解説
変化の激しい時代を生き抜くうえで、特定の知識や技術だけでなく、さまざまな場面に応用できる「メタスキル」の重要性が注目されています。一方で、「メタスキルは具体的にどのように身につければよいのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
メタスキルは、知識として理解するだけで身につくものではありません。物事の捉え方を見直し、日々の仕事や学びのなかで行動を変えながら、実践的に磨いていく必要があります。
こうしたメタスキルを育むために、北欧発のビジネススクールであるハイパーアイランドが確立した手法が「CRAFTメソッド」です。CRAFTメソッドでは、5つの異なる「レンズ」を通して自分自身や周囲の状況を捉え、変化に対応するための思考や行動を養っていきます。
本記事では、CRAFTメソッドの基本的な考え方と、それを構成する5つのレンズについて解説します。
メタスキルはどのように身につけるのか
メタスキルは、説明を読んだり知識を覚えたりするだけで身につくものではありません。実際の課題に向き合い、様々な視点から状況を捉え、行動と振り返りを繰り返すことで、少しずつ養われていきます。
その際に重要なのは、自分の思考や行動の癖に気づくことです。私たちは無意識のうちに、過去の経験や慣れ親しんだ方法に基づいて物事を判断しています。しかし、変化の激しい環境では、これまでの考え方や方法が常に通用するとは限りません。
そこで、自分とは異なる視点を取り入れたり、これまで試したことのない方法を実践したりしながら、結果を振り返ることが必要になります。こうした経験を重ねることで、状況に応じて考え方や行動を柔軟に変える力が磨かれていきます。
このように、メタスキルを身につけるには、知識の習得だけでなく、実践を通して自分の見方や行動を更新していくための枠組みが欠かせません。そのための視点と実践の方法を体系化したものが、ハイパーアイランドの「CRAFTメソッド」です。
メタスキルを養う「CRAFTメソッド」とは
CRAFTメソッドは、5つの要素である「Creativity」「Rapid Rapport」「Agility & Adaptability」「Future Foresight」「Tackling Complexity」の頭文字から取られており、それらを物事や課題を捉えるための「レンズ」として位置づけています。ここでいうレンズとは、状況を見る角度や、考える際の視点を表すものです。
同じ課題であっても、どのレンズを通して見るかによって、着目する点や導き出される行動は変わります。たとえば、既存の前提にとらわれずに考える場合と、未来の変化を想定して考える場合とでは、見えてくる可能性や課題も異なるでしょう。
CRAFTメソッドは、それぞれのレンズについて知識を得るだけのものではありません。実際の課題に対してレンズを使い、考え、行動し、その結果を振り返る経験を重ねることで、状況に応じて視点を使い分ける力をメタスキルとして身につけていきます。
| Creativity | 「創造的拡張」を可能にする能力 |
|
|---|---|---|
| 「迅速な信頼関係構築」を習得する能力 | ||
| 「未知領域の探索」を習得する能力 | ||
| 「未来予測」を可能にする能力 | ||
|
「複雑性への対処」を可能にする能力 |
CRAFTメソッドを構成する5つのレンズ
ここからは、それぞれのレンズがどのような能力を養い、思考や行動にどのような変化をもたらすのかを見ていきましょう。
Creativity /「創造性の拡張」を可能にする能力
Creativityとは「創造性を拡張すること」であり、細分化すると以下のようになります。
1.想像力と好奇心
創造的に考えて、新しいアイデアを探求する能力
2.問題解決能力
複雑な問題を特定し、分析し、解決する能力
3.勇気とリスクテイク
リスクを取り、革新的な解決策を追求する意欲
4.総合力
多様なアイデアやコンセプトを組み合わせ、意味のあるイノベーションを生み出す能力
5.柔軟性
状況の変化に適応し、新しい視点を受け入れる能力
仕事で考えると、「既成概念にとらわれない思考をして、問題に対してイノベーティブな解決策を提示すること」と言えます。
こうしたCreativityを仕事で発揮するうえで重要なアプローチの一つが「デザイン思考」です。
デザイン思考は、単なる「顧客視点」とは異なり、ユーザーをよく観察してインサイトを見つけ、そのインサイトをもとにイノベーティブなものを生み出す考え方を指します。ユーザーになりきるほど深く観察し、その行動や感情の背景まで理解しようとすることで、初めて見えてくるインサイトがあります。
デザイン思考を身につけるためのフレームワークはさまざまありますが、フレームワークを使いこなすことが目的にならないように注意が必要です。仕事でCreativityを発揮するには、デザイン思考を「読み書きそろばん」のような基礎能力として身につけることが大切であり、フレームワークはそのための思考整理や可視化ツールとして使います。
Rapid Rapport / 「迅速な信頼関係構築」を習得する能力
Rapid Rapportとは、「迅速な信頼関係を構築すること」であり、細分化すると以下のようになります。
1.包括性
包括的な環境をつくり出し、多様なグループとうまくやっていく能力
2.感情的知性
自分自身と他者の感情を認識し、理解し、管理する能力
3.協調性
共通の目標を達成するために、他社と効果的に協働するスキル
4.思いやり
人の幸福に共感し、関心を示すこと
5.積極的傾聴
相手の話に集中し、理解し、反応し、記憶する能力
仕事で考えると、「顧客やメンバーと強い人間関係を築き、対立関係を解消し、共通の目的に向かって個々の力を発揮すること」です。
ビジネスで何か大きな業績を出すにはチームの力が欠かせません。また、チームで活動することにより、個人の生産性やモチベーションの向上、専門的な能力開発も見込めます。
Rapid Rapportを考えるうえで重要な概念の一つが「心理的安全性」です。心理的安全性とは、職場で誰もが自由に発言し、懸念事項や問題・課題を共有できると信じられる土台・風土のことです。しかし最近では、心理的安全性を理由に説明責任を避けたり、「好きに行動してよい状態」と捉えたりするなど、間違った理解も見受けられます。心理的安全性に関する研修を実施する際は、こうした「心理的安全性の罠」に落ちないように働きかけ、チームのパフォーマンスや生産性が本当に高まっているのか確認する必要があります。
Agility & Adaptability /「敏捷性と適応力」を習得する能力
Agility & Adaptabilityとは、「認知的敏捷性と認識の向上を通じてレジリエンスを高める」ことです。思い込みを捨て、変化する状況に適応し、新しい経験から学ぶ能力を指します。細分化すると以下のようになります。
1.オープンマインド
新しいアイデアを検討し、異なる視点を受け入れる意欲
2.環境認識
未知の分野を探索し示唆を得ること
3.自己学習
新しい知識やスキルを自主的に習得する能力
4.再帰性
経験を振り返り、そこから学ぶ能力
5.反脆弱性
逆境に打ち勝ち、困難から力を得る能力
仕事で考えると、まったく予期していなかった事態が起きてピンチになったとき、どうすればその状況から脱出できるのかを即座に見出すことにつながります。この能力を習得できれば、未知の領域であっても適切に対応できるだけでなく、そこから新たな学びや解決のヒントを得ることができます。つまり、Agility & Adaptabilityは、「未知の状況に柔軟に適応しながら、新しい視点や学びを得る力」とも言えます。
新しい視点を得るには、普通なら行かない場所に行ったり、出会わない人に会いに行ったりすることも大切です。「まだ知らない課題」を抱えている人たちからは、多くの示唆を得ることができます。そうすることで、視野を広げ、前に進むヒントを得ることができるのです。
Future Foresight / 「未来予測」を可能にする能力
Future Foresightとは、現在の変化や兆候から未来の可能性を見通すことです。急速に様々なことが変化し、先のことは読みづらい現代にあっても、現在起きているトレンドや、変化を生み出している要因を捉えることで、未来予測につなげることは可能です。
細分化すると以下のようになります。
1.システム思考
複雑なシステムとその相互関係を理解する
2.好奇心
変化のシグナルや新たなトレンドなど、新しい知識や経験を学び、探求する意欲
3.語り部
複雑な考えを伝え、説得力のある語りによって他社に影響を与える能力
4.探求心
可能性のある未来について想像し、よりよい質問を投げかけ、潜在的な機会を課題を特定する能力
5.影響力
他者を説得し、望ましい結果に導くスキル
未来について考えなければ、自分たちにとって望ましい未来を手に入れることはできません。たとえ現在の事業がうまくいっていたとしても、それは現在の事業環境に適応しているからであり、この先事業環境が変わればどうなるかはわかりません。未来のことは誰もわからないとはいえ、考えなくてもいいということではないのです。企業は定期的に未来シナリオを共有し、今何に備えるべきかを検討することが重要です。
Tackling Complexity / 「複雑性への対処」を可能にする能力
Tackling Complexityとは、複雑で正解の見えにくい状況を理解し、さまざまな要素に配慮しながら、自分たちの目指すものを形にしていく能力です。細分化すると以下のようになります。
1.複雑性
BANIやVUCAなど複雑性を理解する
2.倫理
道徳性を守り、倫理的行動、誠実さを示す
3.極性管理
相反する事象をマネジメントする
4.セルフリーダーシップ
個人的および職業上の目標に向かって自らを動機付け、導く能力
5.尊重
他者の視点や境界に配慮し、尊重すること
仕事で考えると、未知の状況において、あらゆる面に配慮しながら、自分たちの目的を達成していくことになります。BANIやVUCAといわれるような複雑な状況を理解し、その中で倫理観や道徳的原則、誠実さなどを持ち、他者にも配慮しつつ、自分を動機づけてゴールに向かっていく能力です。
CRAFTメソッドを実践するために
CRAFTメソッドの5つのレンズは、その言葉の意味を理解するだけで身につくものではありません。実際の課題にレンズを当てはめ、他者との対話を通して考えを深め、行動と振り返りを重ねることで、実践的なメタスキルとして養われていきます。
また、5つのレンズを決められた順番で使う必要はありません。課題や状況に応じて複数のレンズを行き来しながら、さまざまな角度から物事を捉えることが大切です。その過程で、自分が使いやすいレンズだけでなく、普段あまり使えていないレンズに気づくことも、思考や行動の幅を広げるきっかけになります。
ハイパーアイランドのプログラムでは、こうしたレンズの活用を促すために、アクティビティや対話、振り返りを取り入れています。ここからは、CRAFTメソッドを実践する際に役立つアクティビティを紹介します。
Creativityのアクティビティ例
内容
STEP1:受講者に「椅子をデザインしてください」と指示し、紙に絵を描いてもらう。
STEP2:受講者に「2人ひと組になり相手にとって快適な椅子をデザインしてください」と指示する。受講者は相手にヒアリングをし、その内容に基づいて新たな椅子をデザインしてもらう。
STEP3:受講者に「STEP1とSTEP2のデザインは何が違うでしょうか?」と問いかける
アクティビティの意図
同じ椅子のデザインでも、STEP1とSTEP2ではまったく異なるデザインになっているはずです。STEP3のように問いかけることで、様々な意見が出てきます。正解があるわけではなく、参加者にいろいろな気づきを得てもらい、デザインの本質を理解してもらう狙いがあります。
Rapid Rapportのアクティビティ例
内容
初めて会った人で即席のチームをつくり、Miroボードのようなチームで使えるポストイットツールを使い、数十枚のデジタルポストイットで、指定された絵柄を制限時間内につくる。
アクティビティの意図
完成した絵が指定された絵柄に近いチームが優勝となりますが、優勝するだけが目的ではありません。このアクティビティを通じて何を感じたかを発言してもらい、それらを通じて、チームで物事にあたるときに、個々のチームにおいて何が起きているのかを実感してもらうことが目的です。
さらに、「ではどうすればよかったでしょうか」と問いかけ、振り返ってもらいます。その振り返りは、そのまま普段のチームでの仕事にも適応できます。
まとめ:CRAFTメソッドを実践し、メタスキルを磨こう
変化の激しい時代に必要とされるメタスキルは、知識として理解するだけでは身につきません。CRAFTメソッドの5つのレンズを使いながら、実際の課題について考え、行動し、対話や振り返りを重ねることで、少しずつ自分の思考や行動の幅を広げていくことが大切です。
ハイパーアイランドでは、各プログラムにおいて、こうした学びを実践につなげるための様々なアクティビティをご用意しています。体験や他者との対話を通して自分の思考や行動の癖に気づき、新たな視点や方法を試すことで、CRAFTの5つのレンズを実践的なメタスキルとして磨いていくことができます。
CRAFTメソッドの考え方や具体的なアクティビティについては、ハイパーアイランドのラーニングデザイナー・森杏奈著『逆転のリスキリングとサードエイジの時代』にて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
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Hyper Island Japanチーム
北欧発のビジネススクール「Hyper Island」の日本チームです。
Hyper Islandのメソッドや思想をもとに、企業や個人の学びにつながる情報を発信しています。



