

2026年のAIトレンドから考える|日本企業の現在地とAI活用の次の一手
生成AIの活用は急速に広がり、企業にとっても「導入するかどうか」ではなく、どのように組織や事業へ組み込むかを考える段階に入りつつあります。しかし、日本企業の取り組みは、海外と比べてどこまで進んでいるのでしょうか。
本記事では、IPA「DX動向2025」の日米独比較をもとに、日本企業のAI・DX活用の現在地を整理します。さらに、IBMが発表した「2026年の5つのトレンド」からAIに関する3つのトレンドを取り上げ、活用が進んだ先で企業が向き合うことになる論点を紹介します。
AIを個人や一部の部署での利用にとどめず、組織や事業の成果につなげるために、日本企業にはどのような備えが求められるのかを考えていきます。
世界から見た、日本企業のAI・DX活用の現在地
日本企業のAI・DX活用は、世界と比較してどのような段階にあるのでしょうか。ここでは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2025」における日本・米国・ドイツの比較調査をもとに、生成AIへの取り組みや活用の広がり、成果の違いを見ていきます。
2024年度時点で、生成AIを「導入している」「現在、試験利用している」「利用に向けて検討を進めている」と回答した企業の合計は、日本では5割弱でした。これに対して、米国では8割弱、ドイツでは7割弱に達しており、企業全体で見ると、日本の取り組みは米国・ドイツを下回っています。
ただし、日本企業が一律に遅れているわけではありません。従業員1,001人以上の企業では、「導入している」と「試験利用している」を合わせた割合が3か国で最も高く、大企業を中心に生成AIの活用が進んでいることがわかります。
一方、企業規模が小さくなるほど、日本の取り組み割合は大きく低下します。従業員100人以下の日本企業では、「関心はあるがまだ特に予定はない」「今後も取り組む予定はない」とする企業が合わせて8割近くに上りました。米国の2割強、ドイツの4割弱と比べても、大きな開きがあります。
日本企業の特徴は、単純に「生成AIへの対応が遅れている」というより、大企業では導入が進む一方、中小企業では具体的な取り組みに移れておらず、企業規模による差が大きいことにあるといえるでしょう。
日本は個人利用・部分最適にとどまりやすい
生成AIの導入状況だけでなく、具体的な利用方法にも国ごとの違いが見られます。IPAの調査では、「個人や部署で試験利用している」と回答した企業は、日本50.1%、米国71.7%、ドイツ55.3%でした。一方、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は、日本13.1%に対し、米国31.4%、ドイツ23.6%に上ります。
日本でも生成AIの利用は広がりつつありますが、文書作成やアイデア出しなどの個人利用、あるいは部署単位での試験利用にとどまり、業務プロセスそのものを変える段階には十分に移行できていない企業が多いと考えられます。
この傾向は、より新しい調査からも確認できます。IPA「DX動向2026」では、AI導入によって一定以上の効果があった企業の91.6%が「業務の効率化・迅速化」を挙げています。一方、「顧客満足度の向上」は4.5%、「売上や利益の向上」は3.9%、「新たな製品やサービスの開発・提供」は7.4%にとどまりました。AI活用の効果は社内業務の改善には表れているものの、顧客価値の向上や新たな事業の創出へ広げる余地は、依然として大きいといえます。
こうした傾向は、DX全体にも共通しています。IPAは、日本企業のDXについて、業務効率化やコスト削減を中心とする「内向き・部分最適」から、顧客価値の創出やビジネスモデルの変革を目指す「外向き・全体最適」へ転換する必要性を示しています。生成AIについても、導入の有無だけでなく、組織や業務の変革にどこまで結びつけられるかが問われています。
IPA「DX動向2025」によると、DXに取り組む企業のうち、「成果が出ている」と回答した割合は、日本では57.3%でした。一方、米国は85.8%、ドイツは87.6%に達しており、DXを実際の成果へつなげる段階で大きな差が見られます。
さらに、日本ではDXの成果が出ているか「わからない」と回答した企業が26.2%を占めています。米国の3.2%、ドイツの6.7%と比べても高く、取り組みの成果を測定し、評価する仕組みが十分に整っていない企業が多いことがうかがえます。
日本企業に求められているのは、単に新しいツールを導入することではありません。AIを含むデジタル技術を組織的に活用し、成果を測りながら、業務改善から顧客価値や事業成果へとつなげていくことが重要です。
IBMが示す、AI活用の3つのトレンド
日本企業では、AIやデジタル技術の導入が進みつつある一方、それを組織的な活用や事業成果へつなげていくことが課題となっています。一方、世界のAI活用をめぐる議論は、導入の有無から、AIを組織や社会の中でどのように活用し、管理していくかという次の段階へ移りつつあります。
IBM Institute for Business Value(IBV)は、1,000人を超える経営幹部と、世界の消費者・従業員8,500人を対象とした調査などをもとに、2026年に注目すべき5つのトレンドを提示しました。ここから、企業のAI活用と特に関係の深い3つのトレンドを取り上げます。
従業員は、より多くのAI活用を求める
企業がAI活用を進める際、従業員の抵抗や変化への疲れを懸念する経営者は少なくありません。IBMの調査でも、経営幹部の56%が、継続的な業務や役割の変化によって従業員が疲弊していると認識しています。
しかし、従業員側の回答からは異なる姿が見えてきます。従業員の77%は、テクノロジーが仕事を変える現在のペースを持続可能だと回答しました。
また、すべての年代で、企業によるAI活用の拡大を「抵抗する」人よりも「受け入れる」人が2倍以上多いという結果が示されています。
すでにAIの効果を実感している従業員も少なくありません。61%が、AIによって仕事が単調でなくなり、より戦略的になったと回答しています。従業員は必ずしもAIそのものを拒んでいるわけではなく、AIを活用して、より価値の高い仕事に取り組む機会を求めていると考えられます。
企業に求められるのは、単にAIツールを導入することではありません。人とAIの役割分担を明確にし、業務プロセスを見直すとともに、従業員がAIを使いこなすための研修や学習機会を整える必要があります。AIによって何を置き換えるかだけでなく、人の仕事をどのように高めるかという視点が重要です。
顧客は、企業のAIに責任を求める
AIを活用した商品やサービスが広がるなか、企業にはAIを導入するだけでなく、その使い方を顧客に対して明らかにする姿勢が求められています。
IBMの調査では、経営幹部の95%が「AIに対する消費者の信頼が、新しい商品やサービスの成否を左右する」と回答しました。また、消費者の89%は、AIとやり取りしている場合には、その事実を知りたいと考えています。
一方で、消費者がAIに完全な精度を求めているとは限りません。56%は、先進的なAIサービスであれば、ある程度の不具合を受け入れられると回答しています。問題になりやすいのは、AIを利用していること自体ではなく、企業がその事実を明らかにしないことです。5人に4人は、企業がAIの使用を意図的に隠した場合、そのブランドへの信頼が低下すると回答し、3人に2人は別のブランドへの乗り換えを検討するとしています。
こうした結果からは、消費者が重視しているのはAIの完璧さだけではなく、AIやデータがどのように使われているかを理解できる透明性だとわかります。企業には、AIガバナンスを社内の管理ルールにとどめず、顧客体験やブランドへの信頼を支える取り組みとして捉えることが求められます。
AI活用の深化に向けて、日本企業が備えるべきこと
IPAの国際比較からは、日本企業のAI活用が個人や一部の部署にとどまりやすく、事業成果への接続に課題があることが見えてきました。一方、IBMが示すトレンドからは、AI活用が進むにつれて、人とAIの役割分担、顧客からの信頼、事業を継続するための基盤が重要になることがわかります。
日本企業には、AIの導入範囲を広げるだけでなく、組織や事業にどう組み込み、持続的な価値につなげるかという視点が求められます。特に、次の3点に備える必要があります。
人とAIの役割を再設計する
AIに任せる業務と、人が判断や責任を担う領域を整理し、業務プロセスを見直します。あわせて、従業員がAIを使ってより価値の高い仕事に取り組めるよう、教育や新たな役割の設計を進めることが重要です。
顧客への透明性と説明責任を組み込む
商品やサービスのどこでAIを使用し、顧客データをどのように扱っているのかを明確にします。顧客自身が利用の可否を選択できる仕組みや、問題が起きた際に人が介入できる体制を整えることも、ブランドへの信頼を守るうえで欠かせません。
AIを継続的に利用できる基盤を整える
利用しているデータやクラウド、AIモデルの所在地と依存先を把握し、規制変更やサービス停止、地政学的な変化などのリスクを確認します。特定のサービスや地域に過度に依存せず、必要に応じて代替できる体制を整えることが、AIを事業基盤として活用するための条件になります。
まとめ
IPAの国際比較からは、日本企業のAI活用が広がる一方、個人や一部の部署での利用から、組織的な活用や事業成果へつなげる段階には課題が残っていることがわかります。さらにIBMの調査は、AI活用が進んだ先には、人とAIの役割分担、顧客からの信頼、データやインフラを含む事業基盤といった新たな論点があることを示しています。
こうしたトレンドや調査データは、未来を正確に予測するためのものではありません。現在生じている変化の兆しを捉え、それが今後、自社の事業や組織、顧客との関係にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを考えるための材料です。
AIをめぐる環境が急速に変化するなかでは、一つの未来を前提に計画を立てるのではなく、複数の可能性を想定しながら備えることが重要です。ハイパーアイランドの「Future Scenarios(フューチャーシナリオ)」では、社会やテクノロジーの変化の兆しを読み取り、起こり得る複数の未来を構想し、現在の意思決定につなげるための考え方と手法を学びます。
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https://www.tds-g.co.jp/hij/action_learning/future_scenarios.html
参考文献:
DX動向2025
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf
DX動向2026
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf
5 trends for 2026(IBM)
https://drive.google.com/file/d/1BNjzdL9Wv_9_wYmcp9_HJOzi-nhIK4il/view
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Hyper Island Japanチーム
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