

マニュアルを作る前に整理しておきたい4つのこと+作って終わりにしないための運用視点
「マニュアル作成を任されたものの、何から始めればよいかわからない」
そんな悩みを抱える人は少なくありません。
マニュアルは、業務の手順を書き残すだけの資料ではありません。業務を標準化し、新人教育や引き継ぎを効率化し、ミスや属人化を防ぐために欠かせないものです。さらに、作成の過程で業務の流れや判断基準を整理することで、業務改善につながることもあります。
ただし、マニュアル作成は、いきなり本文を書き始めればうまくいくわけではありません。誰が読むのか、何のために使うのか、読んだ人に何ができるようになってほしいのか、どこまでをマニュアルに含めるのか。こうした前提を整理しないまま進めると、情報の優先順位が定まらず、読みにくく使いにくいマニュアルになりやすくなります。
また、マニュアルは作って公開して終わり、ではありません。現場で使われ、必要に応じて見直し・更新されてはじめて、実務に役立つマニュアルになります。
この記事では、マニュアル作成前に整理しておきたい4つのことと、作って終わりにしないための運用視点をわかりやすく解説します。初めてマニュアル作成を担当する人でも、作成前に何を考えればよいのかが整理できる内容です。
マニュアルを作る前に決めておきたい基本設計
マニュアル作成では、本文を書き始める前に土台を整理しておくことが重要です。最初に基本設計ができていれば、必要な情報の優先順位が見えやすくなり、構成のブレや内容の重複を防ぎやすくなります。
特に初めてマニュアル作成を担当する場合は、「何を書くか」を考えるより先に、「どのような前提で作るのか」を明確にすることが大切です。
以下、マニュアルを作成する前に、最低限整理しておきたい4つのポイントです。
1. 誰が読むのかを明確にする ー 対象者は?
マニュアル作成で最初に整理したいのが、対象者です。
誰が読むのかによって、必要な情報の深さや表現方法は大きく変わります。
例えば、対象者としては次のような人が考えられます。
新入社員
異動してきた社員
経験者または経験の浅い担当者
他部署 など
新入社員や業務経験の浅い担当者向けのマニュアルであれば、専門用語や社内用語、略語の説明が必要です。前提知識がなくても理解できるように、背景や基本知識も含めて説明したほうがよいでしょう。
一方で、経験者が日常業務の確認に使うマニュアルなら、長い説明よりも、必要な情報をすぐに探せる構成のほうが実用的です。このように、同じ業務を扱うマニュアルでも、読み手が違えば、見せ方も内容も変わります。
マニュアルを作る前に、「誰に向けたマニュアルなのか」を明確にしておくことが重要です。
2. 何のために使うのかを整理する ー 目的は?
次に、マニュアル作成の目的です。マニュアルは目的によって、載せるべき情報や構成が変わります。
例えば、マニュアルの使用目的には次のようなものがあります。
新人教育
業務の引き継ぎ
日常業務の確認
トラブル対応
品質管理
業務の標準化 など
新人教育を目的とするマニュアルなら、業務の流れだけでなく、なぜその作業が必要なのか、どのような点に注意すべきかまで説明したほうが理解しやすくなります。
一方で、日常業務の確認用であれば、詳細な背景説明よりも、必要な手順や確認事項をすぐに見つけられることが重要です。目的があいまいなままマニュアルを作り始めると、「とりあえず全部記載しよう」と情報を詰め込みがちです。
その結果、情報量ばかりが増え、誰にとってどのような場面で役立つのかが伝わりにくいマニュアルになってしまいます。
マニュアルを作る前には、「何のために使うのか」を明確にしておきましょう。
3. 読んだ人に何ができるようになってほしいのかを決める ー ゴールは?
マニュアル作成の目的は、単に読んでもらうことではありません。大切なのは、読んだ人がその後にどんな行動を取れるようになるかです。ゴールとしては、例えば次のようなものが考えられます。
処理の流れを理解できる
システムへの入力を一人で完了できる
トラブル発生時に、適切な担当者へエスカレーションできる など
このゴールが具体的であるほど、盛り込むべき情報を整理しやすくなります。
一方で、「何となく理解してもらう」といったあいまいな設定では、何をどこまで記載すべきか判断しにくくなります。
例えば、「業務全体の流れを理解する」ことが目的なら、細かな操作手順よりも、工程の全体像や役割分担をわかりやすく示すことが重要です。
一方で、「実際に一人で業務を進められるようになる」ことが目的なら、手順だけでなく、確認事項、注意点、判断に迷いやすいケースまで整理する必要があります。
マニュアルを作る前に、「読んだ人に何ができるようになってほしいのか」を具体化しておくことが大切です。
4. どこまでをマニュアルに含めるのかを決める ー 対象範囲は?
対象業務の範囲を決めることも重要です。範囲が広すぎると、情報量が増えすぎて、かえって使いにくいマニュアルになります。
業務全体を説明するマニュアル
個別業務の手順書
トラブル対応マニュアル など
これらをすべて一つのマニュアルにまとめてしまうと、全体像を知りたい人には細かすぎ、具体的な手順を確認したい人には必要な情報が埋もれてしまうことがあります。
また、範囲を広げすぎると、作成時の負担だけでなく、公開後の更新負担も大きくなります。そのため、「このマニュアルでは何を扱うのか」「別資料に分けるのは何か」を事前に決めておくことが大切です。
使いやすいマニュアルを作るには、情報を増やすことよりも、目的に応じて適切に絞ることが重要です。
作って終わりにしないための運用設計
マニュアル作成では、作成前の整理だけでなく、運用を見据えた設計も欠かせません。なぜなら、マニュアルは作って終わりではなく、現場で使われ続けることで価値を持つからです。
業務フロー、社内ルール、使用システムは、時間がたてば変わることがあります。にもかかわらず、マニュアルが更新されないままだと、古い情報が残り、かえってミスや認識のズレを招く原因になります。
そのため、マニュアル作成の段階から、次のような運用の考え方を持っておくことが重要です。
更新ルールや担当者を決める
定期的な見直し時期を決める
改訂履歴を管理する
現場の変更を反映しやすい構成にする など
また、実際に使われるマニュアルにするには、「必要な情報をすぐに見つけられるか」「読んだ人が迷わず行動できるか」という視点も欠かせません。
見た目が整っていても、現場で使いにくければ意味がないためです。
まとめ|マニュアル作成は作成前の整理と運用視点が重要!
マニュアル作成前に整理しておきたいのは、次の4つです。
・誰が読むのか
・何のために使うのか
・読んだ人に何ができるようになってほしいのか
・どこまでをマニュアルに含めるのか
この4つが整理できていれば、必要な情報や構成が定まりやすくなり、使いやすいマニュアルを作成しやすくなります。
さらに重要なのが、マニュアルは作って終わりではないという視点です。公開後に見直し、更新し、現場で使われ続ける状態を保つことではじめて、マニュアルとして機能します。
特に初めてマニュアル作成を担当する場合は、いきなり書き始めるのではなく、まず前提を整理することが大切です。作成前の4つの整理と運用視点を押さえ、実際に使われるマニュアル作成につなげていきましょう。

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ディレクター・編集・テクニカルライター
金融業界を中心に、事務マニュアルの企画・編集・プロデュースに従事。「わかりやすい文章の書き方」を軸に、執筆基準書や編集ルールの策定、UD関連ツールの開発・制作やガイドライン整備にも携わる。







