

IPA「DX動向2026」を要約|DX・AI活用の現状と日本企業に求められる変革とは
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表した「DX動向2026」では、日本企業におけるDXの取組や成果、AI・データの利活用、DX・AIを推進する人材の状況について、最新の調査結果がまとめられています。
調査からは、大企業を中心にDXやAIの導入が広がる一方、その成果は業務効率化やコスト削減など、社内に向けた取組に偏っていることがわかりました。新規事業や顧客価値の創出、ビジネスモデルの変革といった「外向き」の成果につなげるには、全社横断的な推進体制や成果を評価する仕組み、人材育成の基盤を整える必要があります。
本記事では、「DX動向2026」の調査結果から、日本企業のDX・AI活用の現状と、今後の課題を紹介します。
調査概要
IPAは、これまでの調査を継承し、日本企業におけるDXの進展状況、データ・AIの利活用状況、DXを推進する人材などの最新動向を調査・分析しました。本報告書では、2025年度に実施した調査を「今回調査」と表記し、過去の調査結果と比較しています。
従業員1,001人以上の企業では、DXに取り組んでいる割合が98.7%に達し、そのうち67.5%が「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答しています。DXが大企業における標準的な取組になりつつあることがうかがえます。
一方、従業員100人以下の企業でDXに取り組んでいる割合は41.6%にとどまり、49.3%が「取り組んでいない」と回答しました。全社的に取り組んでいる企業も13.6%にとどまっており、企業規模による取組格差が明確に表れています。
DXに取り組んでいない理由にも違いがあります。
100人以下の企業では「自社がDXに取り組むメリットがわからない」が54.0%で最も多く、DXの必要性や効果を具体化できていないことが課題です。一方、101~300人の企業では、「DXに取り組むための知識や情報が不足している」が69.6%、「DXを現場で推進・実行する人材が不足している」が66.1%、「DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している」が62.5%となりました。取組意欲があっても、推進を担う知識や人材が足りない状況がうかがえます。
DXの成果
DXに取り組む企業のうち、「成果が出ている」と回答した割合は60.8%でした。一方、「わからない」とする企業も26.8%あり、DXに取り組んでいても成果を十分に把握できていない企業が少なくありません。
具体的な成果を見ると、「業務効率化による生産性向上」では80.3%、「アナログ・物理データのデジタル化」では76.2%の企業が、すでに一定の成果を得ています。また、「組織横断・全社の業務プロセスのデジタル化」でも50.1%が成果を実感しています。
一方、「既存製品・サービスの高付加価値化」で成果を得ている企業は31.7%、「新規製品・サービスの創出」は20.1%、「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの抜本的な変革」は18.9%にとどまりました。日本企業のDXは、デジタル化や生産性向上といった社内の業務改善では成果を上げているものの、新たな価値や事業を生み出す変革には十分つながっていないことがわかります。
DXの成果には全社的な業務プロセスの最適化が重要
DXで成果が出ている企業では、全社レベルで業務プロセスの最適化を完了、または最適化に取り組んでいる割合が53.8%でした。これに対し、成果が出ていない企業では29.5%にとどまり、24.3ポイントの差がみられました。
部門ごとに個別のデジタル化を進めるだけでなく、部門を越えて業務プロセス全体を見直すことが、DXの成果創出と強く関連していると考えられます。
その他の主な調査結果
・DXの成果指標を設定している企業は23.9%にとどまり、4社に1社にも達していません。
・設定されている成果指標は「内向きの業務改革」が80.0%で最も多く、「外向きの業務改革」は33.5%、「経営改革」は16.3%にとどまっています。成果測定の対象も社内の効率化に偏っています。
・成果指標を設定していない理由は、「評価指標の設定方法がわからない」が36.0%で最も多く、「評価指標はこれから定める」も33.4%でした。
・デジタル分野について一定の見識を持つ経営者の割合は、成果が出ている企業では69.2%、成果が出ていない企業では44.9%でした。
・2024年度から2025年度にかけてDX投資額・費用を増やした企業は51.7%でしたが、投資・費用を上回る効果が出ている企業は14.6%にとどまっています。
・成果指標を設定している企業では、設定していない企業よりも、投資額を上回る効果が出ているとする回答割合が約10ポイント高くなっています。
AIの導入・活用状況
企業におけるAIの導入は急速に進んでいます。ただし、現在の活用は文書作成や情報収集など、個人業務の効率化が中心です。業務プロセスへの組み込みや意思決定支援、新たな製品・サービスの創出など、組織的・戦略的な活用はまだ限定されています。
なかでも生成AIの導入は大きく伸びています。「導入している」と回答した企業は、2023年度の15.6%、2024年度の22.6%から、2025年度には44.0%へ上昇しました。
一方、現在のAI活用は、文書作成や情報収集など、個人業務の効率化が中心です。業務プロセスへの組み込みや意思決定支援、新たな製品・サービスの創出など、組織的・戦略的な活用はまだ限定されています。
主な調査結果は以下のとおりです。
・AIの導入状況には企業規模による大きな差があります。「導入している」と回答した割合は、従業員1,001人以上の企業では78.3%に達した一方、100人以下の企業では16.6%にとどまりました。
・生成AIの利用状況は、「個人で業務利用している」が63.3%、「個人や部署で試験利用している」が44.8%でした。一方、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は11.9%、「全社的なサービスに組み込まれている」は18.6%にとどまっています。
・AIの主な用途は、「文書・音声の要約、翻訳、校正」が82.5%、「文書・レポートの作成」が80.5%、「情報検索・収集・分析・レポーティング」が77.0%でした。文書作成や情報収集など、日常業務を効率化する用途が中心となっています。
・「経営・事業計画・マーケティング・意思決定支援」は17.0%、「自社製品・サービスの高度化」は10.9%、「生産・物流・サービス提供の計画支援」は6.0%にとどまり、事業の高度化に向けた活用はまだ限定的です。
・DXとの関係では、「DX推進の一部としてAIを活用している」が45.1%、「DX推進のためAIを中心に活用している」が9.3%でした。一方、「DXとAIは個別に取り組んでいる」企業も26.1%あり、AIをDXや事業変革と一体的に活用できていない企業も少なくありません。
AIの導入そのものは広がっていますが、その活用は個人や部門単位の業務効率化に偏っています。今後は、AIを業務プロセスや意思決定に組み込み、製品・サービスの高度化や新たな価値の創出につなげられるかが課題となります。
AI導入による具体的効果
AIの導入によって「期待以上」または「期待どおり」の効果を得た企業は、合わせて31.8%でした。「一定の効果はあった」が50.6%を占めており、効果は表れているものの、期待した水準には届いていない企業が多いことがわかります。
AI導入による具体的な効果は、「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%で突出しています。一方、「売上や利益が向上した」は3.9%、「新たな製品やサービスの開発・提供につながった」は7.4%にとどまっています。
このことから、AIの導入は急速に進んでいるものの、現在の成果は個人業務や社内業務の効率化が中心であり、事業成長や新たな価値創出につながる活用はまだ限定的だといえます。
AI利活用に向けた課題
AI活用に必要な学習データを整備し、実際にAIへ活用できている企業は7.0%にとどまっています。「整備しているが十分ではない」が28.4%、「必要性は認識しているが整備できていない」が27.6%で、データ整備の遅れがAI活用を妨げています。
AIの導入・運用における主な課題は、以下のとおりです。
・専門人材が不足している:50.1%
・生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している:45.8%
・適切な利用を管理するルールや基準の作成が難しい:39.7%
この結果から、AI活用を進めるには、ツールの導入だけではなく、学習データの整備、専門人材の確保、社内のAIリテラシー向上、利用ルールの構築が必要だとわかります。また、学習データを整備してAIに活用できている企業ほど、期待どおりかそれ以上の効果を得る傾向も示されています。
DX・AIを推進する人材の不足と育成の課題
DXを推進する人材の不足感はやや緩和しているものの、依然として深刻です。人材の「量」が不足していると回答した企業は85.5%、「質」が不足している企業は88.8%に達しています。「大幅に不足している」とする割合は減少していますが、慢性的な人材不足の状況は大きく変わっていません。
一方で、人材の育成や確保に必要な基盤の整備は十分に進んでいません。主な調査結果は以下のとおりです。
・DXを推進する人材像を設定し、社内に周知している企業は16.2%にとどまります。
・DX人材の評価基準が「ない」と回答した企業は76.1%でした。
・DX人材の育成予算を増やした企業は25.6%にとどまり、約半数は前年から変わっていません。
・DX推進に必要なスキルを把握できていない企業は52.8%と、過半数を占めています。
・必要なスキルを把握している企業では、把握できていない企業よりも人材の不足感が低く、特に人材の「質」において大きな差があります。
・DXで成果が出ている企業ほど、必要なスキルや現在の人材が持つスキルを把握できている傾向があります。
AI関連人材についても、多くの職種で過半数の企業が不足を感じています。特に、現場の知見とAIの基礎知識を持ち、社内へのAI導入を推進できる人材や、データマネジメントを企画・推進できる人材の不足が続いています。
また、AIの普及による業務や必要スキルの変化を見据えた人材対応も遅れています。「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」に着手している企業は19.0%ですが、それ以外の取組に着手している企業は1割未満です。
一方、AI導入による効果を高く実感している企業ほど、業務の変化や今後必要となるスキルを把握し、人材育成・確保に取り組んでいます。
まとめ
今回の調査からは、日本企業においてDXやAIの導入が着実に広がっている一方、取組の深度や成果には、企業規模による差があることがわかりました。DXは大企業を中心に定着しつつあり、AI、特に生成AIの導入も急速に進んでいます。
DXの成果は、データのデジタル化や業務効率化、生産性向上といった「内向き」の領域では表れています。しかし、既存製品・サービスの高付加価値化、新規事業の創出、ビジネスモデルの変革といった「外向き」の成果は限定的です。AIについても、現在の用途と成果は文書作成や情報収集、業務の効率化・迅速化が中心であり、事業成長や新たな価値の創出には十分につながっていません。
また、DXの成果指標を設定している企業は4社に1社未満にとどまり、取組の成果を十分に把握できていない企業も少なくありません。DX・AIを推進する人材についても、量・質の両面で不足が続いている一方、必要な人材像やスキルの明確化、評価・育成の仕組みづくりは十分に進んでいない状況です。
今後は、DXやAIを導入すること自体を目的とせず、経営層のリーダーシップのもとで部門を越えて活用を進め、顧客や社会に向けた価値の創出へと発展させることが重要です。そのためには、目指す成果を明確にするとともに、変革を担う人材と組織の基盤を整え、取組を継続的に評価・改善していく必要があります。
「DX動向2026」はこちらからご覧いただけます。
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html
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