

統合報告書は“チーム戦”|担当者が押さえるべき進め方と体制づくり
統合報告書に“チーム戦”が欠かせない理由
統合報告書は、財務情報と非財務情報を横断的に統合し、企業価値の現在地と将来像をステークホルダーに伝えるツールです。近年では単なる情報開示にとどまらず、経営戦略そのものを可視化する重要なコミュニケーションツールへと進化しています。
その背景には、グローバルな開示要請の高度化があります。2023年に公表されたISSBのIFRS S1およびS2※が2024年から適用され、今後の義務化を見据えて対応が求められるなど、サステナビリティ情報を財務と結び付けて開示する流れが加速しています。また、日本でも金融庁や東京証券取引所の要請により、非財務開示の重要性が一層高まっています。
こうした環境のもと、企業は部門ごとの情報開示にとどまらず、全社横断で一貫したストーリーを構築する必要に迫られています。そこで重要になるのが、「情報をつなぐ力」です。サステナビリティ情報は財務情報と切り離されたものではなく、中長期的な価値創造と不可分の関係にあります。統合報告書は単なる編集作業ではなく、経営そのものを再整理するプロセスと言えるでしょう。
そのため、財務・IR・サステナビリティ部門だけで完結するものではなく、経営企画、人事、研究開発、事業部門など、多様な部門の知見を有機的に結びつける必要があります。人材戦略と事業戦略、研究開発と将来の収益性といった要素を一貫したストーリーとして描くには、部門横断の対話と合意形成が求められます。
言い換えれば、統合報告書の質は「どれだけ優れたチームを組成できるか」に大きく左右されます。会社全体で取り組む“チーム戦”こそが、その成否を分ける最大の鍵となります。
※国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2023年に公表した、サステナビリティ情報を財務報告と一貫して開示するための国際基準。IFRS S1は気候変動を含む幅広いサステナビリティ関連リスク・機会全般の開示要件を定め、IFRS S2はガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標といった気候関連情報の開示に特化している。
統合報告書の制作プロセス
しかし、統合報告書は、思い立ってすぐに完成するものではありません。「突然担当に任命され、何から手をつければいいのかわからない」と戸惑うケースもあるのではないでしょうか。諸所のガイドラインに則り、財務情報に加え、ガバナンス、戦略、リスク管理、人的資本、環境対応といった幅広いテーマを横断的に扱うため、全体像を把握しないまま進めると、情報の抜け漏れや一貫性の欠如が生じやすくなります。こうした課題を防ぐには、初期段階で全体像を設計し、必要な情報項目を洗い出したうえで、収集・整理・統合のプロセスを段階的に進めていくことが必要です。
一般的な制作プロセスは以下のように整理できます。
① 方針設計と全体構成の策定
どのガイドライン(IIRCフレームワークやISSB基準など)に準拠するのかを定めたうえで、統合報告書の目的やターゲットを明確にし、全体の構成と制作スケジュールを設計します。同時に、社内の推進体制や各章の担当部門を割り当て、制作プロジェクトとしての基盤を整えます。
② 掲載内容の設計と情報収集計画の立案
構成に基づき、各章で必要となる情報やデータの洗い出しを行います。重要課題(マテリアリティ)を踏まえ、各内容をどのパートで扱うかを整理し、各部門に対して具体的な依頼事項(データ、原稿素材、図表案など)を提示します。
③ 情報収集と内容の整理・統合
各部門から素材を収集し、内容の整理・編集を進めます。財務情報と非財務情報を横断的に扱うため、数値の整合性や記述の一貫性を確認しながら、全体として矛盾のない内容に統合していきます。単なる情報の寄せ集めにならないよう、ストーリーの骨子も並行して組み立てることが重要です。
④ 原稿作成と誌面デザインの具体化
編集した内容をもとに原稿を作成し、誌面設計へ落とし込みます。図表やビジュアルの検討、デザイン制作を進めながら、「企業の価値創造ストーリー」が直感的に伝わる構成へと仕上げていきます。
⑤ レビュー・校了と印刷/公開対応
経営層や関連部門によるレビューを実施し、内容の妥当性やメッセージの一貫性を確認します。必要に応じて修正を重ねたうえで校了し、公開へと進みます。
部門横断で進めるための重要ポイント
統合報告書づくりを成功に導くには、まず自社のESG情報を棚卸しして現状と不足を明確にし、成長戦略に寄与する要素を優先的に開示する方針を定めることが大切です。構成を検討する前に、ストーリーやメッセージを入念に練れば、報告書全体の一貫性と訴求力が高まります。
既存のガイドラインが求めるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標といった項目を骨格に据えれば、後のデータ収集や原稿整理もスムーズに進みます。また、制作を主管する部門が各部署と継続的に対話できる仕組みを整え、初期段階から社内に広く働きかけると、情報不足や認識の齟齬を未然に防ぐ体制を作りやすくなります。
部門横断でプロジェクトを進める場合、プロジェクトチームをつくるのも1つの方法です。関係部門の担当者同士で目的・スケジュール・役割分担を共有し、情報の範囲や線引きを確認すると、進め方の整理がしやすくなります。
情報収集については、共通のテンプレートなどを用いて整理することで、負担を抑えて進められます。また、初期段階で一部の原稿や図表を試作して共有すれば、関係者が「ここまでできる」という具体的なイメージを持ちやすくなり、協力のハードルを下げる一助になります。
進行管理は、大規模な会議に頼らず、必要に応じて個別に確認やすり合わせを行うことでも整理を加速させることができます。こうしたやり方を組み合わせることで、部門をまたいだ情報の整理や共有をスムーズに進める1つのアプローチとして活用できます。
| 重要ポイント | 具体的な取り組み | 目的・効果 |
| ESG情報の棚卸しと 不足部分の明確化 |
・自社のESGデータを洗い出し、現状と不足を把握 ・成長戦略に資するテーマを優先開示する方針を策定 |
開示範囲を明確にし、報告書の価値を最大化 |
| ストーリーとメッセージの設計 | ・構成検討前にストーリー・メッセージを入念に練る | 全体の一貫性と訴求力を高める |
| 既存ガイドラインの適用 | ・ガバナンス/戦略/リスク管理/指標と目標を軸に構成 | データ収集と原稿整理を効率化し、抜け漏れを防止 |
| 社内対話の仕組みづくり | ・主管部門が関連部署と継続的に対話する体制を整備 ・初期段階から社内へ広く働きかける |
情報不足・認識齟齬を未然に防ぎ、協力度を向上 |
| プロジェクトチームの構築 | ・部門横断でチームを組成し、目的・スケジュール・役割を共有 | 進行管理を明確化し、迅速な意思決定を促進 |
| 情報収集ツールと原稿・ 図表の共有 |
・共通テンプレートで情報を整理 ・初期原稿や図表を試作し関係者へ共有 |
業務負担を軽減し、完成イメージを共有 |
| 個別確認やすり合わせの実施 | ・大規模会議に頼らず、必要時に個別確認・すり合わせを実施 | 調整スピードを上げ、プロジェクトを円滑に推進 |
伴走してくれる社外パートナーともチームを組もう
統合報告書の制作は、担当者だけで行うにはあまりに作業範囲が広く、多くの調整や情報整理、原稿作成、デザインチェックなどが同時並行で求められます。だからこそ、初期段階で社内の協力体制を整えるとともに、専門ファームや制作会社など外部のパートナーを活用し、プロジェクトを推進することが成功の近道になります。
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テイ・デイ・エスのサービスがサポートするポイント
制作コンサルティング:企業の事業内容やESGへの取り組みを整理し、開示すべき情報を見極めます。
クリエイティブなデザイン:視覚的に魅力的で、読みやすく、目的に即したレイアウトを作成します。
一貫したストーリーテリング:企業の未来ビジョンを、魅力的な物語として表現します。
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