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Zendesk CXトレンドレポートに学ぶ、AIが描く顧客体験の未来

2025.09.22 更新

#Hyper Island#テクノロジー#マーケティング

顧客体験(CX: Customer Experience)は、製品やサービスそのものだけでなく、企業と顧客が接するあらゆる場面で生まれる体験全体を指します。CXをどう磨くかは、企業の成長や競争力を大きく左右する重要なテーマとなっています。

本記事は、グローバルにCXソリューションを提供する Zendesk が発表した 「第7回 Zendesk CXトレンドレポート」 の要約です。22か国で5,000人以上の消費者と5,500人以上のビジネス関係者に対して調査を実施した結果をもとにまとめられた本レポートでは、AIの潜在能力を最大限に活かしてCXを変革し、2025年以降も成果を生み出していくための 5つの新しいトレンド が提示されています。本記事では、そのポイントをわかりやすくご紹介します。

目次

    トレンドセッターとトラディショナリストの分断

    調査では、AIを積極的に受け入れ成果を上げている「CXトレンドセッター」と、導入に遅れをとる「CXトラディショナリスト」との間に大きな差が浮き彫りになりました。

    CXトレンドセッターの特徴

    ・早期導入者としてAIを受け入れている

    ・人間的なつながりを高める技術を優先する

    ・AIをCX戦略に深く統合している

    ・変化するニーズに先んじるため積極的に取り組む

    CXトラディショナリストの特徴

    ・既存のやり方を超えたいと望むものの、AIを十分に受け入れていない

    ・AI導入によって人間らしい対応が損なわれることを懸念している

    ・AIをどのように統合すべきか不確かで苦労している

    ・チームにAIツールを効果的に使わせるための研修に課題を抱えている

    とはいえ、59%のトラディショナリストも「来年にはよりAIドリブンになりたい」と回答しており、両者の意識は確実に近づきつつあります。

    顧客体験(CX)における5つのトレンド

    調査から明らかになったのは、AIがCXの姿を大きく変えているということです。ここでは、その変化を示す5つのトレンドをご紹介します。

    トレンド1:AIコパイロットが自律型サービスを加速

    AIコパイロットは、エージェントの業務効率を高めるだけでなく、顧客体験そのものを改善する「Win-Win」の仕組みとして広がっています。CXトレンドセッターはトラディショナリストの約3倍の割合で導入しており、ほぼ全員がプラスのROIを報告。また、93%が「コパイロットは顧客やエージェントをAI活用に慣れさせる最適な方法」と評価し、90%は「今後数年以内に80%の課題は人間の介入なしに解決される」と予測しています。

    AIコパイロットによる主な利点には、生成AIを活用したパーソナライズ対応、リアルタイム意思決定支援、コミュニケーション効率化、複数システムを横断する情報取得の容易化などがあります。その結果、エージェントは自分の仕事をうまく遂行できると感じる可能性が20%高まり、消費者の75%も「AIによる回答作成」に賛同(前年比+10ポイント)しています。

    一方で、AI導入が進まない組織では「シャドーAI」の利用が拡大。承認されていない外部ツールの使用は前年比で最大250%増となり、セキュリティリスクを高めています。

    導入事例として、小売大手のNEXTはZendesk AIを活用し、メール対応時間を11%削減。カスタマイズされたアプリケーションを構築することで、グローバルチーム全体に個別化されたデータと重要なビジネス情報を提供できるようになりました。

    こうした成功を踏まえ、CXトレンドセッターは次のステップとして、AIエージェントや高度なワークフロー、自律的に進化するセルフサービスプラットフォームなどを組み合わせた完全自律型サービスモデルの実装を急いでいます。これにより、人間の介入を最小化しつつ大規模で効率的、かつパーソナライズされたCXを提供できる基盤を築こうとしているのです。

    【ポイント】

    ・まずはAIコパイロットの活用から始める —— これは重要な第一歩

    ・AIエージェント、高度なワークフロー、生成AI検索機能など、CX全体に先進的ツールを統合する

    ・エージェントや管理者の役割がAIの監督者へと進化する未来を見据え、チームを備えさ

    トレンド2:AIエージェントへの信頼の鍵は「人間らしさ」

    生成AIを搭載したAIエージェントは年々進化し、複雑な課題解決において効果を発揮しています。AIを積極的に導入するCXトレンドセッターは、導入が遅れるCXトラディショナリストの4倍以上のスピードでAIエージェントを活用しており、その有効性でも大きな差を広げています。2024年時点で有効性を実感している割合は、トラディショナリストの33%に対し、トレンドセッターは82%と49ポイントの差がありました。

    トレンドセッターが重視しているのは「効率」だけではありません。彼らは、親しみやすさ・共感力・創造性といった“人間らしい特性”をAIエージェントに組み込むことに注力しており、その割合はトラディショナリストの約2倍にのぼります。こうした取り組みは、顧客にパーソナライズされた商品提案を行うなど、体験の質を高め、競合との差別化につながっています。

    実際、消費者の3分の2(68%)が「人間らしい特性を持つAIエージェントを信頼しやすい」と回答。世代別に見ても幅広い層に支持されており、トレンドセッターの73%がこれを重視しているのに対し、トラディショナリストは44%にとどまっています。

    事例として、ヨーロッパ最大の製造業シーメンスの金融部門ではAIエージェントを導入し、請求書対応などに即応するだけでなく、顧客のニーズを先回りして予測。結果として、生産性は約2倍に向上しています。

    【ポイント】

    ・消費者の信頼は効率性だけでなく「人間らしさ」によって築かれる

    ・トレンドセッターは人間的な特性を持つAIに注力し、顧客感情やロイヤルティ向上に成功している

    トレンド3:パーソナルAIアシスタントがCXの主役に

    SiriやAlexaのようなパーソナルAIアシスタントは急速に進化し、消費者は日常のタスクをAIに任せることに前向きになっています。AIへの好意度は67%(前年比+10pt)に達し、81%が「AIは現代のカスタマーサービスの一部になった」と回答しました。世代ごとに使い方の好みは異なるものの、すべての世代が「役に立つ」と認めています。

    こうした変化に伴い、消費者は「個人のAIアシスタント」や「企業提供のアシスタント」を通じて、シームレスで摩擦のない体験を求めるようになっています。

    企業にとっては、この流れに合わせて顧客サービスチャネルを再構築することが不可欠です。特にCXトレンドセッターは積極的で、87%が「2027年までに顧客がカスタマージャーニー全体でAIアシスタントを活用できる体験を設計する」と回答。一方、トラディショナリストでは47%にとどまっています。

    【ポイント】

    ・消費者はAIアシスタントにタスク処理を委ねることを歓迎

    ・世代ごとに利用ニーズは異なるが、全体的に期待は高まっている

    ・トレンドセッターは「アシスタント・ファースト」環境への移行を加速中

    トレンド4:ボイスAIの進化で“声を聞いてもらえる”体験を

    生成AIの進歩によって、ボイスAIはより繊細で人間らしい会話を可能にし、顧客コミュニケーションの新しい標準を築きつつあります。すでに51%の消費者が高度なボイスAIとやり取りした経験があり、60%が「企業にも導入してほしい」と回答しました。

    消費者が求めているのは効率性だけでなく「自然で人間らしい会話」です。

    ・67%は「自然に聞こえる電話対応が体験を向上させる」と回答

    ・74%は「自分の声を理解して応答できるAIが大きく改善につながる」と評価

    さらに、多言語対応の進化によって、顧客は希望する言語でAIとやり取りできるようになり、従来の人員配置モデルに変革をもたらす可能性もあります。

    特に電話対応に依存している企業にとって、ボイスAIの導入は顧客体験の質を大幅に高めるゲームチェンジャーとなり得ます。CXトレンドセッターだけでなく、トラディショナリストにとっても「体験のギャップを埋める切り札」となります。

    【ポイント】

    ・自社の電話対応をテストし、従来のIVRを超える体験を実現できるか確認する

    ・タイピングより便利な新しいタッチポイントでの活用を検討し、CX全体を改善する

    トレンド5:パーソナライズ体験が顧客ロイヤルティを生む

    消費者がAIに最も期待しているのは「パーソナライゼーション」。実際、61%が「AIによるよりパーソナライズされたサービスを期待している」と回答しており、これは単なる特別感ではなく、ブランドロイヤルティを築く不可欠な要素とされています。

    こうした期待に応えるため、91%のCXトレンドセッターは「AIは体験を効果的にパーソナライズできる」と信じており、実際の投資にも積極的です。たとえば、56%のトレンドセッターが製品レコメンデーションや専門的サポート、カスタム化されたエスカレーション設計などにAIを活用しています。一方、同様の取り組みを計画するトラディショナリストは22%にとどまります。

    CXトレンドセッターとトラディショナリストはともに「来年最も重要な指標」として**継続率(Retention Rate)を挙げていますが、トレンドセッターは実際に行動へ移す割合が約2倍高く、CSAT、FCR、IQS、AI解決率など新しい指標も取り入れています。

    パーソナライゼーションをCXの基盤に据えることで、トレンドセッターは顧客の期待に応えるだけでなく、ロイヤルティを新しい成功指標として確立し、長期的な競争優位性を築いています。

    【ポイント】

    ・AIによるパーソナライゼーションは61%の消費者が期待

    ・トレンドセッターは導入・実行でトラディショナリストを大きくリード(56% vs 22%)

    ・ロイヤルティを最重要指標と位置づけ、AI効率指標と統合して進化する顧客期待に対応

    まとめ

    AIは、顧客体験(CX)を根本から変革しつつあります。本レポートが示すように、CXトレンドセッターはAIを戦略の中心に据え、効率化や自律化だけでなく、人間らしさやパーソナライゼーションを重視することで、顧客ロイヤルティを強化しています。一方で導入に遅れた企業との差は広がっており、AIの積極的な統合が今後の競争力を大きく左右するといえるでしょう。今まさに、AIを「補助」から「主導」へと進化させる時代が始まっています。

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