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ペルソナとは?成果につながる設計手順と注意すべき落とし穴

2025.09.05 更新

#UX/UI#Webデザイン#マーケティング

Webサービスやアプリ開発の制作現場では、多様化するユーザーやビジネスニーズへの対応が求められます。限られた時間やリソースで、求められる成果を出すには、「誰のために、何を作り、どのように伝えるか」といった明確な目的意識を持って進行する必要があります。その際の有効な手法として「ペルソナ」が活用されます。ペルソナは関係するメンバー間で「共通認識」を持ち、一貫した意思決定を支える基盤となります。

目次

    ペルソナとは?

    ペルソナは、統計データやユーザーインタビュー、アンケートなどから得られた実際の情報をもとに、ターゲットユーザーの特徴・価値観・行動特性などを具体的にまとめた架空の人物像です。
    例えば「40代男性、部課長職、育児中、効率を重視し新しいことに前向き」といったプロフィールが該当します。抽象的な顧客像を具体的に設定することで、現場での指針を明確にします。

    ペルソナ設計の目的

    チームとして共通認識を持つ

    ペルソナは、さまざまな部門や職域、立場で働くメンバーがそれぞれ「想定している顧客像」を認識統一するものです。例えば「30代の共働き子育て世帯の母親」という人物像を詳細に描き、その家庭がどんな時間に、どんな動機でサービスを利用するのかといった内容を具体化しておくことで、プロジェクトメンバー間で異なる顧客イメージをあらかじめ統一しておくことができます。
    この結果として、一貫性のある顧客体験の設計や、部門横断で統制の取れた意思決定、施策の実現などにつながります。

    ユーザーの現実的なニーズを把握

    ペルソナを設計することで、年齢・性別・職業といった表面的な属性にとどまらず、ユーザーの課題や期待を具体的に共通認識として捉えることができます。さらに悩み・モチベーション・意思決定の方法まで分析すると、深いレベルまでユーザー理解を進めることができ、適切なアプローチやスムーズな進行につながります。

    • 何に困り、何に不満を抱いているのか(課題・ペインポイント) 

    • 何を達成したいのか、どんな状態を望んでいるのか(ニーズ・ゴール)

    • どんな価値観や優先順位で、なぜその選択をするのか(意思決定の背景・モチベーション)

    • どのような情報源に触れ、購入や利用までにどういった行動をとるのか(カスタマージャーニー)

    例えば「30代女性・IT系企業勤務・忙しくて時間がない」という人物像であった場合、「時短」や「手間がかからない手続き」が強い訴求ポイントになります。また「スマホで完結したい」「夜間に利用できるサポートを」といった行動特性が導きだせます。
    こうした現実的なニーズをもとにすることで、具体的なプロダクトの機能・コンテンツテーマ・接触チャネル(広告・LINE・Web等)の最適化が可能になります。当然、ニーズや課題が明確であるほど、ユーザーへ提供できる体験の質、満足度を向上させやすくなります。

    ペルソナ設計プロセス

    的確なペルソナを構築するには、感覚や思い込みに頼るのではなく、客観的な情報と段階的な検討が欠かせません。やみくもにペルソナを作るのではなく、正しいプロセスと視点に基づいて設計することでユーザー理解や事業成果につながります。ここでは、実務に役立つ具体的な手順とポイントを3段階に分けて解説します。

    1.リサーチ段階:ユーザー理解の徹底

    理想的なペルソナを作るためには、現実の利用者に基づいた「一次情報」を集めます。チームの思い込みや既存のマーケティング資料に頼るのではなく、実際のユーザーからの「ヒアリング結果」や「利用データ」、「リアルな行動観察」などの一次情報をもとに設計することで、机上の空論にならないようにします。

    <調査方法の具体例>

    • ユーザーインタビュー:ユーザーの動機や課題を深掘り 

    • アンケート調査:大量のデータから傾向やパターンを把握

    • Web行動分析・行動観察・ユーザーテスト:利用状況から実際の課題を抽出

    2.分析・抽出段階:具体的な人物像の形成・認識共有

    プロフィールの明文化

    リサーチで集めた情報を整理し、単なる情報ではなく「一人のキャラクター」と認識するレベルに落とし込みます。例えば「30歳・女性・中堅IT企業・一人暮らし・仕事で忙しい・健康志向」などの属性に加え、「行動・心理・意思決定のシーン」までストーリーとして具体化します。
    単なる属性の列挙ではなく、生活背景や意思決定プロセスに至るまでを明確にすることで、商品やサービス開発時の判断基準に活用できるようになります。

    関係者間の合意形成

    完成したペルソナは、必要な関係者とミーティングやレビューを通じて内容を確認します。特にユーザーと接点を持つ現場担当者をメインに関係者間に違和感ないか、現場目線とのズレがないかなどを丁寧に確認します。この過程で意見交換し、必要な修正を加え関係者間の合意を得ることで、部門や職域、立場等による視点の偏りを回避し、全体の指針として機能させます。

    3.活用・運用段階:定期的なアップデート

    ユーザー像は時間とともに変化するものです。サービスリリース後も、アクセス解析や再インタビュー、カスタマーサポートへの問い合わせ内容などから定期的にペルソナの現状分析を行い、ユーザー像をアップデートしましょう。

    <アップデートのタイミング:例>

    • 新たなサービス展開や機能追加時 

    • 社会の状況やトレンドに変化があった時

    • 前回のペルソナ策定から半年〜1年ほど時間が経過している時

    定期的な議論を計画しておくなど、陳腐化したペルソナにならないよう意識的な改訂が大切です。

    ペルソナ導入事例

    TOPPAN株式会社エレクトロニクス事業本部の「リクルートページ制作」におけるペルソナ設計事例をご紹介します。本プロジェクトでは、関係者間での合意形成から始まり、Web行動分析によるペルソナ設計、データ分析によるコンテンツの提案、デザイン制作までワンストップで支援しました。

    経緯と設計の流れ

    エレクトロニクス関連の事業をさまざまな会社が行うなかで、TOPPAN株式会社がエレクトロニクス事業を行っていることを求職者に認知してもらう必要がありました。このとき、募集対象が半導体をメインに製造している工場であったため「半導体に関心のあるユーザー」をメインターゲットに定めました。

    本件では求職者の条件が限定的なこともあり、最初にWeb上の行動分析ツールを用いて調査を行いました。Webで「半導体」のキーワードを検索するユーザーの行動を調査し、基本的な属性や興味・関心、情報収集手段などを探りました。

    さらに、リサーチ結果を可視化したデータから特徴的な要素をピックアップし、ターゲットの具体像を作りました。
    Web行動からは、以下のようなユーザーの傾向の把握と仮説立てができました。


    ①ユーザー属性の傾向と仮説(例) 【ユーザー属性】

    ・スマホよりもパソコンを使う(スマホ:パソコン=2:8)
    ・男性が約7割(男性:女性=7:3)
    ・20代の検索者が他の世代に比べて約2倍
    ・日曜日に検索するユーザーが多い

    ユーザーの多くは、パソコン派で日曜日にセッションが多くまとまった時間に情報を集めてじっくり吟味するタイプ


    ②買い物行動の傾向と仮説(例) 【買い物行動】

    ・楽天やオークション、フリマアプリを積極的に利用している
    ・タイムセール商品や増量されている商品をよく購入する

    買い物ではネットを活用してしっかりと下調べする、なるべく損をしたくない計画的で堅実なタイプ


    効果・有用性の検証

    この段階のペルソナはあくまで仮説のため、ペルソナ策定後にプロジェクトメンバー間で大きな認識のブレや誤りがないかの確認、さらにペルソナ像に近い入社3年目未満の若手社員へアンケートにより検証しました。
    仮説立てと検証を行ったペルソナにより、求職者が本当に求めている情報は何か?どのような見せ方をすれば効果的か?というもっとも重要な検討を、スムーズに進めることができ、採用ページのコンテンツ企画やライティング・デザインのトーン&マナーの軸として活用しました。

    ペルソナ設計の失敗例と回避ポイント

    効果的なペルソナは、現場の意思決定やユーザー体験の向上に大きく貢献します。しかし、落とし穴にはまると、ペルソナ自体が形骸化し、むしろ判断を誤る要因になることがあります。
    ここでは、実際の現場でよくある「ペルソナ設計の失敗例」と、その背景にある問題を紹介します。失敗パターンを事前に把握し、自社のペルソナ作成・運用にお役立てください。

    自社の都合に偏ったペルソナ

    ユーザー調査を十分に行わず、自社の関係者をモデルにしたり、都合の良いユーザー像を設定すると、実際の対象とかけ離れた人物像になり、意思決定に悪影響を及ぼします。
    例として、自社社員のITリテラシーの高い人物をモデルにペルソナを策定し、実ユーザーに多いITが苦手な層、高齢者・初心者を置き去りにしてしまう場合などです。こうしたズレを是正しないままプロジェクトを進行すると、顧客視点ではない施策ばかりが生まれ、目的を達成できない要因となります。担当者の経験や主観に頼るのではなく、一次情報をもとにペルソナを策定したり、仮説であれば検証を行うことを意識します。

    属性のみのペルソナ

    「30代女性、会社員、独身」のような属性情報だけでは、その人物がどんな悩みを持ち、どう比較検討し、どんな選択肢をするのかが見えてきません。例えば、同じ「30代女性・会社員」でも、以下のような背景や価値観を把握できる情報があると、求めていることや趣味趣向、提供すべき価値が検討しやすくなります。

    • 忙しくて家事の時間がないことに悩んでいる人

    • 自己研鑽や趣味活動を大切にしている人

    • 健康意識が強く、食品やサービス選びにうるさい人

    ペルソナ設計における項目の例を参考に、人物像を具体化していくことで「誰でも当てはまる」状況を回避し、施策の的を絞りましょう。

    <ペルソナ設計項目の例>

    • 名前

    • 年齢/性別

    • 職業/役職

    • 家族構成

    • 価値観/モチベーション

    • よく利用しているサービスやメディアの種類

    • タッチポイント(情報収集チャネルや利用デバイス)

    • 行動パターン(購入までの流れ・意思決定プロセス)

    • 平日・休日の過ごし方(通勤やレジャー、趣味など)

    • 日々のちょっとした不満や悩み

    • サービス利用の動機や理想のゴール

    情報が陳腐化したペルソナ

    一度作ったまま見返すこともアップデートもせず放置されたペルソナは、時代に取り残され現実とのズレが顕著になります。例えば、コロナ禍を経て、働き方などの生活様式が大きく変わったにもかかわらず「通勤中にスマホでチェック」など数年前の行動パターンが前提にされたまま戦略を立てているケースなどが典型です。
    こうした古いペルソナを使い続けると、新規ユーザーの獲得や既存顧客の満足度維持に支障が出る場合があります。定期的な利用データの確認やアップデートのルール化をすることで活用され続ける状況を作るなど工夫をします。

    まとめ

    ペルソナ設計は、一次情報に基づくリアルな人物像の作成や関係者間の合意形成、継続的なアップデートで効果を発揮します。単に資料として作るのではなく、チーム全体で理解し、判断時に必ず参照することで価値を発揮します。主観や形骸、属性のみなどの設計といった失敗例を回避して、ぜひ真に役立つペルソナ設計にトライしてみてください。


    Webサイトやプロダクト開発に直結するペルソナ設計支援

    テイ・デイ・エスでは、Webサイト制作や新規プロダクト開発の現場において、調査・分析、ペルソナやジャーニーマップの策定、体験設計、UIデザインなど一貫してご支援しています。単なる人物像の作成にとどまらず、「誰に」「どんな体験を」「どう届けるか」を明確に、事業の成果につながるアウトプットを実現します。

    「ターゲットユーザーをどう定義すべきか?」「プロダクト改善に必要なユーザー理解をどう進めるか?」など、UXに関するお悩みがあれば気軽にご相談ください。初期段階のリサーチから設計・制作・改善まで、伴走いたします。

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    Teamやぶさめ

    TDS マーケティングチーム

    テイ・デイ・エスのマーケティング戦略の企画・実施を行うチーム。
    デザインカンパニーとして題材の深堀りやコンテンツの作成・発信を行う。