トップページブログ受容性調査とプロトタイプの関係性とは?新規プロダクトの「失敗回避」設計術

受容性調査とプロトタイプの関係性とは?新規プロダクトの「失敗回避」設計術

2025.07.03 更新

#UX/UI#マーケティング

良かれと思って実装した機能が、リリース後まったく使われない。そんな苦い経験をされたことはありませんか?このような「失敗」の多くは、開発フェーズではなく、もっと前の「作る前の見極め」に原因があるかもしれません。

そこで近年注目されているのが、受容性調査とプロトタイプを掛け合わせた検証アプローチです。

目次

    受容性調査とプロトタイプが両輪である理由

    なぜ「受容性調査 × プロトタイプ」なのか?

    新しいアイデアを考えた次にやるべきことは、「そのアイデアが本当に想定したユーザーに歓迎されるのか」を確かめることです。この見極めが受容性調査であり、そのアイデアを形で伝えるのがプロトタイプです。

    受容性調査の際、言葉だけのやり取りではユーザーの反応が曖昧になりがちですが、プロトタイプを実際に触ってもらうコミュニケーションによって「体験」に対するリアルな反応を確かめやすくなります。

    その結果、机上では気づけない勘違いや誤解を発見し、開発前に方向修正が可能になったり、場合によっては「作らない」という判断材料になり、不要な手戻りやコストを未然に防ぐことになります。

    よくあるつまずきとその兆候

    受容性調査は非常に有効な手法ですが、やり方を誤ると「検証したつもり」で終わってしまうこともあります。ここでは、調査初心者が特に陥りがちなつまずきポイントを、代表的な5つに絞ってご紹介します。

    ユーザーの声をすべて
    鵜呑みにしてしまう

    受容性調査の際、「便利そう」「使ってみたい」ポジティブなコメントは嬉しいものですが、言葉の裏にある本音や不安、行動とのギャップを読み解かなければ、本心はわかりません。たとえば…「笑顔で「いいですね」と言いながら、画面操作では迷っている」「発言と行動ログが噛み合わないケース」など、違和感に注目しながら調査する必要があります。

    定性調査だけ、あるいは、
    定量調査だけ行えばよい

    定量調査は傾向の把握に有効ですが、結果の背景がわかりません。定性調査は深い理解に向いていますが、傾向化しにくいという課題があります。両者の「役割分担」と「順序設計」を考え、「インタビューをして仮説を立てたうえでアンケート(定量調査)で裏付け」「アンケートで傾向を把握して、気になる点をインタビューで掘り下げる」など組み合わせで精度を高めることができます。

    モデレーションは
    誰がやっても一緒?

    プロトタイプを使った調査では、質問の順番やトーン、沈黙の扱いなど、モデレーションの質が非常に重要です。よくある落とし穴として、「質問が誘導的」「ユーザーを急かしてしまう」「ユーザーの反応を拾い切れていない」等があります。モデレーションは、経験値で左右されるため、現場経験を積むトレーニングやリハーサルなど念入りに準備しましょう。

    仮説バイアス/
    自己都合の仮説検証

    「このアイデアは絶対にウケるはず」と信じたい気持ちは誰にでもあります。ですが、その期待が仮説の精度を曇らせ、結果の解釈にバイアスをかけることがあります。インサイト分析は複数人で行い、客観性を失わないように特に気を付ける必要があります。あえて「反証」を探すスタンスが、検証精度を高めます。

    結果が「判断材料」として
    活かされていない

    調査結果が会議で報告されて終わってしまう。次に何をどう決めて進めるかが不明確。これはとても多い失敗例です。結果の共有方法、共有する相手、結果を受けて判断する人、アクションするタイミングなど、チーム内で事前に設計、共有しておくのがおすすめです。

    <テイ・デイ・エスのお役立ち資料>

    受容性調査の成功率を高めるために押さえるべき失敗パターンの兆候や対策、現場で活きる設計Tipsや事例を1冊にまとめた実践ガイド(PDF)をご用意しています。

    成功に導く検証ループのつくり方

    受容性調査の効果を引き出すには、「一度だけの調査」ではなく、小さな検証ループを何度も回す設計が大切です。

    1|仮説を絞る

    まずは「何を確かめたいのか」を明確にします。ユーザーにとって本当に重要な課題は何か、自分たちが「こうあってほしい」と思っているポイントとユーザーの期待にズレはないかを整理し、検証の焦点を1つか2つに絞り込みます。曖昧な仮説のまま調査を始めると、得られるフィードバックも漠然としがちです。

    2|プロトタイプを用意する

    必要最小限で構いません。本質的な体験や仮説の「検証に必要な部分」に絞って作成します。たとえば、UI全体を作り込むのではなく、ある1つの機能やフローの理解度を見たいのであれば、画面3枚でも十分です。
    重要なのは、「見た目の完成度」よりも、「ユーザーがどう捉えるか」に集中できる構成にすることです。

    3|触ってもらい、行動と声を観察する

    実際にプロトタイプを操作してもらい、言葉だけでなく行動・感情・発話の「揺らぎ」などにも注目します。
    ユーザーが戸惑ったポイント、表情が曇った瞬間、口に出した不満や驚きなどは貴重なインサイトです。録画や画面操作のログを取ることで、後からチームで振り返ることも可能になります。

    4|インサイトを整理し、改善 → 再検証

    得られたフィードバックをもとに、仮説や設計を見直し、プロトタイプに反映して検証を繰り返します。
    この小さな改善サイクルを複数回行うことで、ユーザーにとって価値のある方向性が徐々に浮かび上がってきます。調査は1回で終わらせるものではなく、「学びを重ねて育てるもの」として捉えることが重要です。

    まとめ:小さな検証が大きな失敗を防ぐ

    ユーザーの「声」と「行動」を見極めるために、受容性調査とプロトタイプは欠かせない武器です。
    「仮説に向き合い、小さく作って、触ってもらい、反応から学ぶ」
    この一連のループが、開発初期に「確信」を与えてくれるはずです。


    プロダクト開発の「検証フェーズ」から伴走します

    テイ・デイ・エスでは、単なるUIデザインにとどまらず、受容性調査やプロトタイプを通じて、開発初期の不確実性に向き合う支援を行っています。ユーザーインサイトを深く捉えた設計や、小さく素早い検証ループの実行支援など、戦略と体験をつなぐUX/UIデザインを強みとしています。

    「このアイデアはユーザーに求められているか?」「どこまで作り込むべきか?」といった判断に悩む場面があれば、ぜひご相談ください。プロジェクト立ち上げ期から、調査設計・UIデザイン設計・改善提案まで伴走いたします。

    詳しい資料はこちらからダウンロード!

    Teamやぶさめ

    TDS マーケティングチーム

    テイ・デイ・エスのマーケティング戦略から実施までを担うチーム。
    デザインカンパニーとして題材の深堀りやコンテンツの作成や発信を行う。